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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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白と影の国の戦い(2)

 医療技術とは恐ろしいものだ。人体を知るということは、他人から思うように情報を聞き出し、操ることができる。その術をアグノは知っている。この異国の地で、雪の国の資材もない場所で、アグノはそれを成し遂げたのだ。

 アグノが医学院で働く医学博士であったこと。間違いない事実だ。そして、その技術を医学院という人体実験施設で開発していたこと、それも事実だ。アグノはソルトをそれから遠ざけたかったのかもしれない。アグノは雪の国の残酷さを、少しでも異国から隠したかったのかもしれない。

 もしかすると、戦乱の宵の国は、雪の国の技術を欲するかもしれない。人を操る術があれば、戦乱の宵の国を支配する上で役立つに決まっている。

 しかし、ソルトは黒の色神を見つめた。彼の一色からは、そのような邪心は見られない。同じ色神として、ソルトを対等に扱う黒の色神。黒の色神は影の国とは違う。そう思った。


 ソルトは土に囚われた萩を見た。あのような、誘導で萩が解放されるはずがない。そう思っていた。それほど単純なのか、と疑問を覚えたが萩の一色が変わった。一色が変じたのは命令の直後だ。


「萩?」


問うたのは、柴だった。すると萩は柴を見て目を見開き、そして微笑んだ。萩の色がとても大きく優しい色に変じた。その大きさは柴と似ている。

 ああ、なるほど。とソルトは思った。柴が萩をどれほど思っているのか、理解できたのだ。


 朦朧としているシュドリードを横目に、アグノはシュドリードから離れた。

「先日は助けていただきありがとうございました」

アグノは萩に言った。

「あの時は、あれが精一杯だった」

そして萩は赤の術士野江に言った。

「突然の襲撃、申し訳なかった」

それらの言葉が、萩が解放されていることを示していた。

「問題なくてよ」

野江が答えた。萩は解放されている。

 一つ、それだけでソルトは救われたような気がした。たったそれだけのことだが、雪の国の罪が消えたような気がしたのだ。

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