白が見る赤(11)
柴はシュドリードを押さえつけながら、顔を近づけて言った。
「あんたには痛い目を見せられたな。術士でもないくせに、影の国の生まれであるからと、無能な者が出世をする。外部から仕入れた兵士を使い捨ての駒にして、命を命を思わない。あの二人にも、それを命じたんだろ」
柴が示した先に、一色が乱れて動けない二人の術士がいた。
「己の命は、誰にも侵食されない唯一のものだ。生きることも、死ぬことも、己で決めてゆくものだ。苦痛を逃れるために逃げること、幸福を追い求めることは、すべての人に認められた権利だ。あんたはそれを侵食する。俺たちの権利を奪い、自由を奪い、そして命を奪う。あんたのせいで、萩は……」
感情的になっている萩をなだめたのは赤の色神だった。
「柴、落ち着け」
たった一言。その一言に計り知れない重みがあった。
「アグノ、柴のことは気にするな。あとは任せたぞ」
赤の色が先へと進めた。アグノは一つ頭を下げて、押さえつけられているシュドリードに歩み寄り顔を覗き込んだ。
「シュドリード。あなたが話せないのなら、それでもかまいません。ですが、聞き出す術はあるのですよ。雪の国を甘く見ないでください。ああ、それはご存知ですよね。雪の国は人体を知り尽くしているのですから」
そしてアグノは再び尋ねた。
「いかがでしょうか。話すつもりにはなりましたか?」
ソルトの知らなかった残酷な一面だった。
狼狽したシュドリードは言った。
「命を、助けてくれるのか?萩らは処分しても構わない。じゃが……」
そこまで言うと、シュドリードはうなった。柴が押さえつける力を強めたのだ。
「影の国の者として、誇りもないのならば、あなたが真実を言うという保証はないのですね」
アグノは言うと、一つの薬を取り出した。
「敵が影の国と知り、火の国の薬師に依頼して調合してもらいました。ゆっくりと、夢の中で答えを教えてください」
ソルトがよく知った注射器だ。それをアグノはシュドリードの腕に刺した。