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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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白が見る赤(7)

 赤は何とも強い色だろうか。


 ソルトは赤の色神を見て、そのように思った。


 赤の色神として生きる紅は、なんとも強い人だろうか。



 冬彦が信頼を寄せるのも理解できる。赤の色神の洗練された一色が、赤の色神の強い一色が、鮮烈な一色が、そこにあるのだ。同じ色神として、ソルトは信念を持たねばならない。雪の国に対して、雪の国の民の命に対して責任を持たなくてはならない。ソルトは赤の色神に、色神としての手本を見せられたような気がしたのだ。

「私も残るわ。アグノはいつも私を遠ざけるの。危険なことから、残酷なことから。美しく、神々しくあればいい。命を扱う白の色神は、そのような存在だと。白の色神の役割は、白の石を生み出すことだけだから。でもね、アグノ。私はそれだけの存在でありたくないの。私の自由の利かない体では、大したことはできないでことでしょう。それでも、私は白の色神なの。白の色神なのよ。雪の国に対して、私は責任を持つの。何が起こっても、これは私の責なのだから」


黒の色神が低い声で笑った。

「白の色神。我々色神は、人ではない。色に選ばれ、色神となった途端、人でなくなったのだから。色神となることを望む者は多いだろうが、望んだからと言って色神になれるものは少ない。そして、色神となった者も、色神となるものを望んでいないことも、また然り。ちなみに、黒の色神である俺は、色神となることを切望していた。色神とならなければ、生き残ることができなかっただろうからな。だが、色神となって分かることもある。色神とは、何とも虚しい生き物だ。何とも虚しい生き物さ。それでも、俺たちは色神だ。その存在は色のためにある。そして、色が守る国のためにある。俺には、白が守る雪の国がどのような国なの国なのか分からない。北の大国と称され、命を扱うその国を統べることは、何とも重いことだろう。命を救う力を手にすることは、逆の意味で命を奪う力よりも恐ろしいことだ。だから、力を自らの意志で使わなければ良い。ただ、力を持つだけで、その使い方を他者に委任すれば良い。おそらく、歴代の白の色神は、そのようにしていたのだろう。白の色神は、その恐ろしい力を白の色神は手にした。そして、その恐ろしい力を自らの支配下に置いて、その恐ろしい力をコントロールして、その恐ろしい力を利権から遠ざけ、真に国のために使おうとしている」


黒の色神はソルトに歩み寄った。その黒い目が柔らかく細まる。

「それでいい。俺たちは色神だ。その力を適正に使うためには、逃げることは許されない。どのような現実からも、どのような残酷なことからも、どのような汚いことからも。白の色神は覚悟を決めた。それでこそ、守る価値のある色神だ」


ソルトの心に、光がさした。


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