表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
704/785

白が見る赤(6)

 アグノが何をするつもりなのか、ソルトは分からない。ソルトは白の色神だが、アグノはいつもソルトを子供扱いするのだ。今回も同じだった。


「ありがとうございます」


アグノは、三人の赤の術士に礼を言った。そして、ゆっくりと続けた。


「萩は囚われています。そして、二人は薬の副作用によって動くことができません。彼は術が使えないでしょうから、問題ありません。――私は今から残酷なことをします。雪の国の医学院で働いていた、医学博士らしいことをします。だから、どうか、ここは私と彼らだけにしてください。問題ありませんから」


アグノは続けた。


「ソルト、白の石をいくつかいただけませんか?」


アグノは何かをするつもりだ。そもそも、雪の国によって奴隷兵士として改造された彼らに、アグノは何をするつもりなのか。アグノはいつもソルトを危険から遠ざけようとする。それがアグノの優しさであり、それがアグノの常なのだ。ソルトはこの場にいたかった。それでも、アグノの優しさを知っているから断ることができない。ソルトはいくつかの白の石を取り出し、握りしめた。


「赤の色神、あなた方も離れていてください。どうか、ここは彼らと私だけにしてください」

アグノは丁寧な口調で赤の色神に話した。


 げらげらと笑い声が響いた。それは、赤の色神の笑い声だ。

「私たちにも離れろと?」

笑っているはずなのに、赤の色神の声は強い。不思議と恐怖を覚えた。空気がピリピリと張り詰める。赤の色神の鮮烈な赤色が辺りを満たしているのだ。

 赤の色神は自身の信念の元に行動している。ソルトが己の信念を貫いたのは医学院の廃止という一点だけだ。雪の国は、白の色神を崇拝している。そして、国家としての体制が整っているから、本来、色神は白の石を生み出すだけでいいのだ。火の国の赤の色神と異なり、白の色神の意志や信念は必要とされない。術士を統制する力も必要とされない。必要なのは、雪の国のために白の石を生み出すこと。


 医学院を廃止した時点で、ソルトは己の信念を果たしたつもりだったのだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ