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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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白が見る赤(5)

 野江ら戻ってきたのは、少し後のことだった。三人の人がいる。一人は深い傷を負った老人で、二人は意識のない若い術士だった。

 術士だと分かるのは、二人の一色が特殊だからだ。まるで、作り物のような一色だった。機械的で、気持ちの悪い一色。おそらく、彼ら二人本来の一色とは異なる色だ。


――これも雪の国の技術。


ソルトは理解していた。雪の国は影の国の術士を改造していた。そして、薬を売っていたに違いない。医学院で研究された、一色を強制的に高める薬を売っていたに違いない。それも、雪の国の民の生活を支えるために重要な、輸出品の一つだ。


 一つの国が戦争のために、不要な権力者の暗殺のために、色神の暗殺のために、影の国に依頼をする。依頼料として支払われた金銭を使い、影の国は雪の国の技術を受ける。影の国から支払われた報酬で、雪の国は大国として名を馳せて、国を運営することが出来る。

 影の国が依頼を果たすために幇助しているのは雪の国だ。

 ならば、雪の国は影の国と同様に色神の暗殺に手を貸しているともいえる。


――美しくなんてない。


ソルトは思った。

 雪の国は神の国。白で覆われた美しい国。世間は雪の国をそのように称賛するが、実際はそんな国ではない。

 雪の国は呪われた国。命を弄び、他国の色神の命さえ食おうとする。何とも浅ましくて、何とも穢れた国。白で覆われた一面の雪景色は、己の醜さを隠すため。雪の国は冷たい国だ。人を人と思わぬ、冷酷で醜くて、残酷な国だ。


――それでも、雪の国はソルトの守るべき国。


赤の色神は赤に対して信頼を寄せているようだが、ソルトは違う。ソルトは白の色神でありながら、白を崇拝するような気持ちは抱いていない。それでも、白が残酷な色とならないことをソルトは願ってしまうのだ。


 それこそ、色神としての宿命なのかもしれない。


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