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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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白が見る赤(3)

 ソルトは何も言うことをやめた。これからのことを、アグノに任せることを決めたのだ。

「冬彦、本当にありがとうございます。あなたがいなければ、ソルトは殺されていたでしょう。でも、冬彦は守ってくれました。あの、宿屋からソルトを連れだし、こうやって守ってくれました。ソルトは私の希望です。雪の国を変える存在です。本当に、お礼のしようがありません」

アグノは、冬彦に言った。すると、冬彦は困ったように顔を伏せた。


「俺は、紅に謝らなきゃいけない。俺は、赤の術士なのに、勝手に……」


ソルトは失念していた。冬彦は赤の術士なのだ。ソルトが敵か味方か分からぬ状況で、ソルトと一緒にいるということは、紅への裏切りを意味する。冬彦はソルトに話していた。詳細は不明だが、冬彦が赤の術士となったのは最近のことだ。そして、かつて冬彦は紅の暗殺を謀ったことがある。もし、ソルトなら、冬彦を許すことはできない。その真意がどこにあったのかわからない以上、冬彦の行為は裏切り行為ととられてもおかしくないのだ。


「ああ。そうだな、冬彦」

紅は低い声で言った。しかし、この声はとても穏やかで、静かに舞い降りる雪のようであった。冷たさはさほどなく、美しさだけを残す。


「冬彦は突如姿を消した。秋幸たちに謝っておけ。心配をかけたんだからな。冬彦。私は冬彦のことを信じていた。だが、消えたときは、正直戸惑ったさ。拉致されたのか、冬彦自身の意志で消えたのか、少なくとも冬彦が白の色神と一緒だということは分かっていた。冬彦の一色は白を指しているからな。――と、強がってみても、結局のところ私は仲間に支えられている身。黒の色神に諭されて、落ち着いていたのが正直なところだ」


紅は自らを飾ろうとしない。そこにいるのは、強い紅だ。


「それでも、今回の事態に白の色神の力は必要だった。野江が敗れたのは、萩だから白の色神に責があるとしても、赤丸の場合は異なる。白の石がなければ、赤丸の回復には長い時間が必要だった。その間、赤丸には辛い時間だっただろう。白の色神が白の石を提供してくれたから、赤丸は苦しむ時間が少なく済んだんだ」


紅は言った。

「白の色神がこの火の国に足を運んだことを否定したりしないさ。白の色神の来訪があったからこそ、萩らと出会えた。萩は私の恩人である柴の親友であり、そして火の国の民だ。彼を救う。これは、私が赤の色神である間にしなくてはならないことだ」

紅の言葉は強いが、ソルトの中に一つの不安を残した。

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