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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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白が見る赤(2)

 アグノが何をするつもりかわからないから、ソルトはじっとアグノを見つめていた。ソルトの弱い目には、アグノの一色が見えている。アグノの強い意志がそこにあるのだ。

 ソルトの知る限り、アグノは戦いに適していない。そもそも、平和は雪の国だからこそ、白の術士に戦いは求められない。白の術士に必要なのは、命を救うその力なのだ。――だから、戦いになれば、雪の国は真っ先に影の国に力を頼るだろう。雪の国は、確かな財力を持っているのだから。

「ソルト、失礼します」

アグノがソルトを地に降ろした。アグノは戦うのだ。だから、ソルトは離れなくてはならない。


 赤の色神がアグノの申し出に同意することが、ソルトにはとても意外なことに思えた。ソルトの見る赤の色神の一色は、とても鮮烈で強い色だ。それでも赤の色神は一歩引いた。

 赤の色神が、赤の術士の力をアグノに貸し出したことは、とてもありがたいことだ。赤の術士は、影の国の術士とも渡り合える、戦うことに特化した術士だ。その力は、アグノを助けることができる。

 赤の術士たちが、影の国の術士を捕えに立ち去った。それは、赤の色神を支える主要な術士たちだ。ソルトは、その中の二人、義藤と柴が戦うところを見たのだから間違いない。


 ソルトは地に座り込んだ。立っていることに疲弊したのだ。冬彦が何も言わずに、ソルトの横に座った。冬彦の手が、軽くソルトの背を叩いた。アグノのより小さな手だが、その温もりは確かにソルトに伝わった。

「ソルト、大丈夫ですよ」

アグノが微笑んだ。何が大丈夫なのか、と罵倒したい気持ちがしたが、ソルトは何も言わなかった。影の国の術士を殺せばよい。だが、赤の色神はそれを許さないだろう。ソルトは赤を見た。白、黒、そして赤。色はなんとも個性的なのだ。赤を見れば、赤がどれだけ温かい色なのか分かるのだ。


 赤の色神は影の国の術士を見捨てない。

 ソルトが招いた結果だ。

 雪の国が招いた結果だ。

 だから、ソルトは影の国の術士を見捨てることはできない。

 アグノが萩を助けることができると言えば、それを信じてしまうのだ。

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