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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色と色神(14)

 三人の影の国の者を押さえつけた野江らは、彼らを連れて紅の元へ戻った。紅がアグノに従えといったから、野江らは一時的にアグノの指示に従っているのだ。


 影の国の正体は知らない。それでも、萩のことは知っている。野江と鶴巳とアグノを救ってくれた人だ。だからだろう。野江は萩に死んでほしくなかった。不意打ちとはいえ、己を一撃で倒した存在、それが「萩」だ。

「野江」

三人の影の国の術士を押さえながら連れていると、柴が口を開いた。

「どうかしたのかしら、柴」

野江が問い返すと、柴はくしゃりと表情を崩して大きく微笑んだ。

「ありがとうな」

柴の唐突な言葉に、野江は戸惑った。

「なぜ、そんなことを急に……」

素知らぬ表情をしているのは、義藤だ。柴は己の見栄や自尊心など気にしないかのように言った。

「俺一人では、萩に勝てなかった。そして、野江であれば、萩を殺すこともできた。火の国で影の国が暗躍している。本来ならば、萩は殺されるべき存在だ。野江らが殺さずとも、赤影が影から萩を殺してもおかしくない。赤影も踏みとどまった。それは、俺のわがままを皆が聞いてくれたからだ。――すべては、俺のわがままだ」

柴の言葉に、素知らぬ顔をしていた義藤が答えた。


「それは、これまでの柴があってのことでしょう。少なくとも、俺は柴に救われてきました。あなたが紅城にいるだけで、大きな温もりに守られているような気分がするのですから。だから、柴、誰もがあなたを信じているのです。柴が萩を信じている。萩を救おうとしている。だから、俺は萩を救いたい。それだけです」


何とも義藤らしい言葉だった。理路整然としていて、知的で強いが優しい義藤らしい。それが義藤だ。


 三人の影の国の者を連れて、野江は紅の元に戻った。野江たちが離れる前の何も変わっていない。土で押さえられた萩がそこにいた。杉は、不安そうな表情を見せている。アグノは一体、何をしようとしているのか。野江にはわからない。それでも、萩を死なせず前に進む道があると野江は信じたかった。


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