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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色と色神(13)

 野江は知っていた。鳳上院家よりも力を持っているのは、「色神」だ。実際に、柴が野江を迎えにきたのだから、兄が頼ったのは色神だと考えられる。だから、野江は先代に尋ねたのだ。答えは返ってこなかったが……。

 鳳上院家のことを野江は好ましく思っていない。とはいえ、それは餓えたことも凍えたこともない野江の独りよがりなのかもしれない。野江は、誰もが羨む家に生まれたのだから。ならば、二十年前になぜ兄は「庵原太作」の存在にたどり着いたのか。先代が気づかなかったことに兄は気づいた。なぜ気づいたのか。――それは、庵原太作が兄に近い位置にいたから。いや、兄でない。野江の近くにいたのかもしれない。


――鳳上院家。


それが何を意味するのか。

部屋の中の美しい人形であった野江は知らない。上の兄たちが何をしていたのか、手広い鳳上院家の商いが、どのように行われているのか。

 なぜ、優しい兄は上の兄たちに煙たがられていたのか。


 急に顔に火がともるような気がした。野江は、何も知らず、何も知らないまま陽緋という立場にいたのだ。自らの存在意義を、自己定義を揺るがすような事態。


「野江、何も気にするな」


柴が低い声で言った。野江の動揺も、何もかもが柴に伝わってるような気がした。一色を見る生活。一色を見る人生。それがどのようなものなのか、野江は想像もしたくない。


「柴。二十年前に何があったのかしら」


野江は思わず口にした。二十年前に、野江は救い出された。どうやって、兄は先代と接触したのか。野江は分からない。柴はわずかに目を見開き、そして微笑んだ。


「二十年前、俺は先代紅の力になっていると自負していた。だが、実際は違ったのかもしれない。先代は、俺に何も話さなかった。俺だけじゃない。赤影も知らなかったそうだ。俺に聞いても無駄さ。二十年前といえば、俺が野江を迎えに行った年。俺は、先代に命じられたから、野江と鶴蔵を迎えに行った。俺に聞いても、分かるのはそこまで。それだけさ」


柴はゆっくりと続けた。


「さあ、紅の元へ行こう」


柴の声は大きく響いた。


 

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