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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色と色神(8)

 野江は紅の石を握りしめた。この場は制御されている。三人の色神と術士たちによって、影の国の術士が暴れ始めたところで何の意味もなさない。

 影の国を刺激するな、といった黒の色神の言葉の意味も野江は理解している。二年前、そして先代が命を落としたとき、野江たちは「庵原太作」という名で官府の中を暗躍していた影の国の力に痛い目に合わされたのだから。二年前の戦いがなければ、佐久と都南が代償を支払うことはなかった。佐久が今も剣士であり、都南が今も術士であったのならば、今と状況が全くことなるだろう。さらに、下らぬことを考えるならば、十年前に先代が命を落とさなければ、今と状況は全く異なるだろう。今も先代が生きていれば、今の紅と出会うことはなかっただろうし、義藤と出会うこともなかっただろう。義藤は紅についてきた存在なのだから。

 影の国は刺激してはならない。影の国が火の国の中で行動をしているのならば、なおさらだ。影の国が火の国の中で行動し、子供をさらい、萩や杉のような術士を作り出している。それが何とも恐ろしく、何とも気味が悪いものだ。

 同時に、野江は雪の国に対しても同様の感情を抱いた。清廉潔白。雪の国はそんな国だと思っていた野江は、自らの無知を恥じた。視線を動かせば、そこに白の色神がいる。幼い子供である白の色神が、紅と重なって見えた。野江の目の前にいる白の色神は「医学院」とやらを廃止したらしい。ならば、紅と同じ改革派だということだ。こんな小さな体で、色神という重圧の中で生きているのだ。白の色神も色神として生きている。野江は当初、他色の色神の来訪は、火の国に災いをもたらすと思っていた。しかし、今は違う。紅と同じ色神であるのならば、紅と同じ重圧の中で生きているのならば、幼い色神を守りたいと思うのだ。野江は術士だ。色の力を引出す。その力は色神のためにある。


 色神の命を奪うことは間違いだ。色神は色が選んだ存在。色が選んだ時点で、色神は人でなくなる。だから、人が色神を裁くことなど出来るはずがない。自らの手を汚さず、影の国へ報酬を支払い色神を殺害するなど、許されることではない。


 一体、どの程度の報酬で影の国は色神の殺害を行うのか。

 野江はひしひしと込み上げる思いをぐっと、押し殺した。

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