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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色と色神(6)

 あってはならないことが生じたとき、野江は己のすべきことを行った。


――野江、戦ってくれるか?


紅のそんな言葉が野江の中に浮かぶ。

「紅!」

彼女の名を叫んだのは、紅を呼ぶためでなく、己を落ち着かせるためだった。歴代最強の陽緋として、己を奮い立たせて戦うためだ。


 赤が乱れている。この状況を打開できるのは、赤の色を収束させることができる存在だ。色の力を収束させることができるのは、紅、悠真、そして赤丸。野江が知るのはこの三人だ。

 赤丸が色を収束させようとして倒れた。そして悠真も動かない。ならば誰が萩を救うのか。


 このまま力で抑え込むには容易い。いくら萩が優れた術士とはいえ、多勢に無勢という言葉がある。萩の持つ紅の石は、加工が不十分だ。萩がいくら天才であっても、加工が不十分である上で、柴、義藤、野江、秋幸、赤影らに囲まれて勝つことなど出来るはずがない。

 野江は陽緋だ。紅を守らなくてはならない。紅を守るためには、何が必要なのか。野江は知っていた。例え、柴への裏切りになっても、野江は守らなくてはならない。人の命を奪うことを野江は嫌っている。それでも、己の手を汚さずに紅を守ることなどできない。少なくとも、野江には殺さずに勝つほどの力はない。それが分かりつつ、躊躇ってしまうのは野江が弱いからだ。義藤のように、殺さぬ戦いを誓うほど強くない。赤影のように命を奪う業を負うほど強くもない。野江は本当に弱い存在だ。


 入り乱れる赤の力の中、秋幸が色の中に割って入った。

 嫌な気持ちがした。

 まるで、秋幸が紅に変わろうとするかのような、そんな嫌な気持ちだった。

 無力な陽緋は何もできない。

 野江はただ、秋幸の行動を見るしかできなかった。

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