表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
688/785

緋色と色神(4)

 紅は威風堂々と現れた。紅が歩むだけで、あたりに赤い色が零れていく。ここが赤の国だと知らしめるかのような存在。それが紅なのだ。


「野江、紅の石は柴から受け取っただろ。頼んだ」


紅は強く言い放つと、身軽な動作で空挺丸に乗り込んだ。アグノや杉も続く。当然のように黒の色神もいた。そうそうたる顔ぶれといったところだろう。

 野江は紅の石を取り出し、その石を空挺丸の中枢へと置いた。空挺丸は、稀代のからくり師鶴蔵が作った逸品だ。紅の石の力を動力へと変えて、空を自由に飛ぶ。ただし、空挺丸を動かすには、強大な紅の石の力が必要で、空挺丸を動かすことが出来る術士は限られている。だからこそ、この船は野江が使うことが多い。鶴蔵が時間をかけて作り上げたからくりだ。この空挺丸を操り、風を切ると野江は何とも言えない気持ちになるのだ。

 今回の空挺丸の旅は紅城から官府までの短い旅だ。そこから、そこまでの短い距離。


「柴が戦っているな」


紅が空挺丸の欄干に頬杖を突き、官府の方向を見つめていた。

「義藤の方は、赤丸の乱入で片付いたようだが……」

紅の低い声だ。どこか、呆れたような声色だった。

 紅は色神だ。野江の知らない力を持っている。紅は分かっているのだ。官府で誰の石が使われているのか。その石が義藤の石なのか、赤丸の石なのか、柴の石なのか、紅が生み出した石だからこそ紅は分かるのだ。

 それは一体、どのような世界なのか。どのような感覚なのか。ただの人間である野江には、紅の気持ちなど分かるはずもない。


「野江、柴が戦っている。あそこに降ろしてくれ。――好きにさせてたまるか。そう思うだろ、野江。ここは火の国。赤の国なんだ。黒の色神も、そう思わないか?これ以上、好きにさせてたまるか」


紅に強い声だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ