表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
686/785

緋色と色神(2)

 白い石の光が輝く。アグノは雪の国の術士だ。アグノは白の術士。火の国の誰が使うよりも、白の石の力を引き出す。

 野江の身体が軽くなっていく。失われていた手の感覚が戻っていく。熱を持った体も冷えて、脈打つような痛みが消えていく。どのような薬よりも、白の石の力は効果をもたらす。まさに、神の力だ。白の石が強大な力を持ち、雪の国が大国であることを野江に教えた。

 野江は軽くなった体を起こした。眩暈も何もない。白の石の力ということだ。


「野江、休んでいる暇はない。すぐに立つ。空挺丸を動かす。官府へ行くぞ」


紅が立ち上がり、野江の枕元に畳んであった赤い羽織を掴んだ。そして、豪快に広げると野江に渡した。赤い羽織が美しく広がる。


「野江、頼んだ」


紅の後ろから光が差し込む。外の光に照らされた紅は、何とも美しく、赤い色を放っていた。野江はそんな紅を愛しく思い、布団の上に正座をすると紅に対して深く頭を下げた。


「空挺丸の準備をさせておく。アグノ、お前も一緒にくるんだ。杉も一緒に連れて行く。ここは火の国だぞ。赤の国だ。影の国の好きにさせてたまるか。野江、急いで準備をしろ。すぐに立つ」


紅が荒々しく足を進めた。その姿は野江にとって愛しくて、温かくて、何とも言えない気持ちになった。

 野江はその気持ちに覚えがあって、記憶をたどった。よみがえるのは、兄の姿だ。野江は閉ざされた部屋の中で、兄を見送る時、いつもそのような気持になっていた。依存しているのだ。野江は理解していた。

 幼いころ、野江は兄に依存していた。兄がいたから、今の野江がある。兄がいたから、野江は地獄の日々を生き抜くことができた。

 そして今。野江は紅に依存しているのだ。紅がいるから、紅が必要としてくれるから、野江は歴代最強の陽緋として戦っていけるのだ。

 野江は先代を守ることができなかった。

 だから今度は、守って見せる。相手が影の国であっても、萩であっても、野江は戦うだけだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ