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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色と色神(1)

 野江は陽緋として生きてきた。

 二十年前、柴の手によって紅城に連れられて、それからずっと紅城で術士として生きてきた。


 先代は野江を可愛がり、今の紅は野江を信頼してくれた。


 野江は何ともいえない気持ちだった。


 野江の目の前には紅がいる。その紅になにかしらの異変が生じている。紅を襲った何かしらの異変。けれども、野江には踏み込むことができない。野江は紅に目を向けて、そして目を閉じた。視界は黒で塗りつぶされた。


 思い出すのは紅の姿。

 思い出すのは、快活な紅の姿。












 数刻前のことだ。


 野江は傷が原因で死の淵を彷徨い、アグノと葉乃によって救われていた。全身が重く、野江は体を起こすことができなかった。


 野江が紅城で横になっていると、突然、障子が開き、紅が駆け込んできた。続いて、アグノが連れられてきた。アグノが手にしているのは、白の石だった。紅は野江の布団の横に膝をつくと、野江の胸にすがった。


「野江、白の色神から白の石が届いた。――柴と義藤が官府で戦っている。野江、アグノが白の石を使う。申し訳ないが、もう一度戦ってくれないか?」


紅が野江に言った。

 野江は陽緋だ。歴代最強と称され、誰よりも強い術士であった。紅のために戦うことは、野江にとって至極当然のこと。それでも紅は野江に頼んだ。

 ふと、野江の中に小さな違和感が浮かんだ。今の紅と出会って十年。紅のことは、よく知っているつもりだ。紅は野江が心配するほど無茶をする。紅は野江ら術士を差し置いて、自らで前線に立つのだ。


 野江が覚えた小さな違和感。それは、紅が野江に依頼する。野江らの説教が功を奏したのか、紅自身が改心したのか、野江には理解できなかったが、少なくとも紅が野江に頼ったことをうれしく思ったのだ。 野江の腕はしびれている。感覚がなくて、しびれて、今のままでは刀が握れない。野江は術士の力で陽緋となった。だから術が使えれば問題ない。


 それでも、野江は自らの腕が戻ることを願っていた。

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