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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤の裁決(6)

 紅は萩を見つめていた。鮮烈な赤色が、強く輝いている。


「紅。紅の言うことは、最もだ。異国が己の国で画策している。そんな嫌なことはないだろう。それは、色神としての誇りを穢されるようなものだ。――だが、紅。この事態に責任を負うのは雪の国だ。雪の国が術士を機械仕掛けの奴隷兵士につくりかえたのだから。そして紅。俺たちには、この事態を収束させる力はない。俺たちには、人の命を扱うようなこと、できないのだから。出来るのは、アグノを信じて、彼に協力するだけだ」


クロウの手が紅の肩に乗せられた。


「それが、宵の国を統一させた軍師としての裁断か?」


紅がクロウに問い、クロウは微笑んだ。


「少なくとも、残された道はそれだけだ。ここで、火の国が影の国と争う必要はない。宵の国でも言われている。影の国は触れてはならないとな。例え、この数名の術士が火の国の民であり、火の国の民が影の国によって理不尽な目にあい、苦しみを与えられたとしても、火の国が影の国を刺激するほどのことじゃない。影の国は触れてはならない。今回のことが、いたずらに影の国を刺激するほどのこととは思えない。数名の命を切り捨ててでも、影の国から離れることが火の国を守る最善の方法だ」


クロウは当然のように、命を秤にかけていた。クロウは黒の色神だ。クロウも黒の色神として、幾度となく苦渋の決断を下してきたに違いない。それは、紅と同じ。


 命を秤にかける。


 何も守るべきなのか。

 何を捨てるべきなのか。


 クロウは紅に選ぶ道を示した。ここで萩らの命を救おうとすれば、火の国の崩壊を導くことにつながる。火の国を守るには、萩らを切り捨てるしかない。


「勘違いしないでほしい」


クロウは言い、続けた。


「これは、彼ら影の国の術士を切り捨て、見捨てることじゃない。可能性に欠けるだけだ。アグノという可能性にかけるだけだ。雪の国の術士に委ねるだけだ。――紅。誰も紅に決断を強いることはできない。判断を強いることはできない。どのような経路で決断しようとしても、誰の助言を受け入れて決断しようとしても、生じた結果に責任を負うのが色神の宿命なのだから」


紅の重圧を知るのは、同じ色神であるクロウなのだ。クロウの言葉は静かに広がりを持つ。クロウの声が辺りを支配する。


「色神は権力を持つ。人は色神となった途端、人でなくなり、立場を保証される。それは、色神が崇高なる存在だからだ。だから、何が生じようとも、俺たち色神は崇高なる存在であり続けなくてはならにあ。過ちは許されない。誤った判断は許されない。どんな苦悩の果てであっても、誤った判断の責は、色神にあるのだから」


クロウの声は強く響く。


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