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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤の裁決(5)

 この場を取り仕切っているのは紅だ。紅がすべての決定権を持ち、紅の判断がこの場を動かす。悠真は紅を見つめた。


 紅の大きな仲間であった、惣次が住んでいた悠真の村が、下村登一の命令に従った四人の隠れ術士に襲撃された時、紅はどのような気持だったのだろうか。

 紅城で、悠真が見た紅の涙が、彼女が背負う重圧を示していた。


 今回は、火の国としての方向性が求められている。この場にいるのは、異国の力だ。白の色神を有する大国雪の国。そして黒の色神を有する大国宵の国。そして、「庵原太作」として名を潜め、先代の暗殺や二年前の襲撃にも加担していた影の国。

 三つの力の中で、火の国は舵取りを求められている。火の国としての威厳。火の国としての自立。火の国として、方向を決めなくてはならないのだ。


黒の色神が口を開いた。


「紅。アグノに任せてみろ。少なくとも、これは火の国だけで片付けられる問題じゃない。これは、火の国を舞台にした、雪の国と影の国の問題だ」


黒の色神は、紅と同じ「色神」という立場から物事を口にしている。それは、心から紅を思う義藤ら赤の術士にはできないことだ。黒の色神の言葉を耳にした紅は、小さく笑った。


「クロウ、それは違うな」


紅は一つ言った。紅の石は強い力を有しているが、黒の石を有する大国宵の国と比較すると、火の国は小さな島国だ。その島国の色神が黒の色神に意見することは、少し恐ろしいことのように思えるのは、悠真だけでないはずだ。宵の国がその気になれば、火の国が食われることだってあり得るのだから。


「違うとは?」


クロウは僅かに不快な表情を見せたが、かぶせるように紅が言葉を続けた。


「クロウ、これは雪の国と影の国だけの問題じゃない。萩は間違いなく火の国の民だ。柴の仲間だったのだから、間違いない。ならば、それは火の国の問題だ。萩は柴と共に赤の術士となるべき存在。それを、影の国が勝手に奪い、火の国の民である萩の命をもてあそび、利用し、苦しめた。萩だけじゃない。松も、杉も、間違いなく火の国の民だ。かつては柴を利用していたのだろう。私は火の国の民を守る赤の色神として、火の国の民の命に責任を負う。影の国が勝手に、火の国の民を利用することは許さない。この事態は、私の責任だ」


紅の声は強い。


――火の国を守る赤の色神として、火の国の民の命に責任を負う。


その強い声に、悠真は息をのんだ。紅が赤の色神として、どのような道を歩いているのか悠真は知ったのだ。

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