赤の裁決(4)
秋幸の使った黄の石の力で盛り上がった土に囚われた萩は、その威厳を失うことをしなかった。命じられたことを、遂行する猟犬のような存在だった。それでも、彼自身の誇りがある。それは間違いない。紅はゆっくりと口を開いた。
「私には力が必要だ。今以上、何を望むのだと、柴らは言うかもしれない。私は先代よりも優れた力を持つ中間に恵まれた。その仲間が、今の私を支えてくれている。――先代は、私に多くの力を残してくれた。その力が、赤の色神紅となった私を守り、支えてくれていた。私は、火の国のために生きてきた。私が生まれたこの火の国を愛しているから、火の国を守る赤のことを尊敬しているから、私は力を欲する。先代が私に残してくれたように、私も次に残さなくてはならない。赤の術士を、そして、平和な火の国を」
紅の言葉は凛と力を持ち響き、鮮烈な赤色が辺りを満たす。これが「赤」なのだ。強く、神々しく、美しく、辺りに力を与え、そして温かい。それが赤なのだ。これが、赤なのだ。
アグノが紅の言葉に続けた。
「これは雪の国の責です。雪の国が萩や杉の存在価値を歪め、雪の国の誤った者がソルトの命を奪う依頼を影の国に依頼したことで、火の国に戦乱を持ち込みました。赤の色神。私に力を貸していただけませんか?私がすべて蹴りをつけます。雪の国の民として、私が終わらせます」
アグノの言葉は強い。異国人であるアグノの容姿は、悠真の知る火の国の者と異なる。身体の大きなアグノには、不思議な迫力を持つ。言葉は紫の石で火の国の言葉に訳されているのだろうが、その声の強さはアグノの持つ迫力そのものだ。
「どうやって、終わらせるつもりだ?」
紅が片眉をひそめてアグノの言った。紅の端的な言葉に、関係のない悠真であっても萎縮した。
(これは火の国の問題だ)
とでも紅は言いたいようであった。悠真の知らない紅がそこにいた。一人で問題を片付けようとして、根本では誰も信じていないような、そんな紅の姿だった。
「これは、私にしかできません。雪の国で、医学院で働いていた私にしかできないのです。赤の色神。私に機会をください。私を信じていただけませんか?」
アグノは、まるで火の国の民のように深く、深く頭を下げた。
紅は、そんなアグノの様子を強い眼差しで見つめていた。