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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤の裁決(1)

 紅は萩に言葉をかけた。それは、火の国の色神、赤の色神紅としての言葉だ。

「依頼を果たす。それが、俺たちの存在価値だ」

萩は紅に言い返した。そして萩は続けた。


「――殺せ」


萩は言った。悠真は、萩という人が分からずにいた。彼の一色がよく見えないのだ。悠真の目は不完全だから、色が見えないのかもしれない。しかし、萩の色が見えないのは柴も同じらしい。悠真よりも確かな目を持った柴が、何とも言えない強い声を出したのだ。


「萩、お前に何があった!お前の色はそんな色じゃなかった。お前は……」


柴が萩に駆け寄った。大きな柴が、萩にすがりつく。柴は強い。それは、先日の苛烈な色だ。

「お前は……」

柴と萩の関係は、悠真の知るべきところではない。それは、紅も同様だ。長年、術士として戦い続け、野江らの少し上の存在として戦っていた柴。加工師として優れた力を持つ柴。一色は生まれ持ってのものなのか、生育過程で変じていくのか、答えは分からない。だが今、柴の色から大きさは消えている。嵐によって濁流に変じた川のような色だ。


「柴、あたくしたちを助けてくれたのは、彼よ。萩があたくしたちに逃げる機会を与えてくれたのよ」


野江が歩み寄り、柴を萩から引き離した。

「その節は、ありがとう、と例を言うわ。あなたの希望通り、杉はそのにいるわ。無事よ。萩、あなたは杉を助けたいと思ったのではなくて?だから、あなたは、遠回りな方法で杉をあたくしたちに託したのよ。萩、あなたは分かっているのではなくて。赤の色神紅に、助けを求めることが、杉を助けることになると。あなた、分かっているのでしょう。あなた、望んでいるのでしょう。影の国の術士でなく、赤の術士として生きることを。だから、あなたは矢守り結びを結ぶのでしょう」

野江の声は温かい。

「あたくしは、あなたに恩があるわ。あなたに敗れて、影の国に囚われて、本当なら、あたくしは殺されていたことでしょう。あなたがいなければ、殺されていたのでしょう。だから、萩があたくしの命をつないでくれたように、今度はあたくしがあなたの命をつなぐわ」

野江は命の境をさまよった。萩を憎んでもおかしくない。自を傷つけられて、痛めつけられて、相手を許して助けようとすることが出来る人は少ない。少なくとも、悠真に許すことができるのか分からない。囚われた野江と萩の間に何かがあったのだ。萩が野江を救ったという決定的なことがあったのだ。




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