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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤に生じた異変(5)

 紅は義藤から離れると、自らの足で歩み始めた。紅の体調が万全でないことは明らかなのに、紅はその辛さを微塵も見せない。色たちの会話で、白は言っていた。白の石を使うことで、問題の根本からの解決はできないが、今の状況を打開することができる。紅が倒れる、今の状況は打開できた。しかし、紅が倒れた原因を取り除くことはできないということだ。


「赤が口を閉ざした」


クロウが紅に歩み寄り言った。その様子を悠真も見ていた。黒と白が話していた様子を、悠真も見ていた。


「だろうな。だが、それは赤の問題だ。誰にも踏み入ることはできない」


紅はゆっくりと足を進めながら、クロウに言い返した。強い紅がそこにいた。クロウは紅の腕をつかんだ。

「違う。それは赤と紅の問題だ。何を抱えている、紅。何を隠している」

クロウの声は荒い。赤に生じた異変が、他色の色神の心を乱している。色神は人でない。彼らは人から色の器へと変じた特別な存在。色は違えど、色の器という点では同じだ。只人たちより、彼らたちの間のつながりのほうが大きい。

「クロウの身に起こることじゃない。これは赤の問題だ」

紅は足を進め、秋幸に近づくと秋幸の肩に手を乗せた。


「秋幸、大丈夫か?」


肩で息をする秋幸に、紅は声をかけた。そして、紅は秋幸の隣に膝をつくと、ゆっくりと口を開いた。

「ありがとう、秋幸。私の代わりに萩を救ってくれたな。さあ、ことを進めよう。先に進まなくては、彼らに悪い。――こんな時まで、私のことにかまうな。この言葉の意味、分かるだろ」

異変が生じた赤と紅。紅は凛とたち、それを隠している。一見すると、いつもの紅だ。強く、豪快な紅。気持ちのいいほどに、物事を決めていく紅だ。紅は踏み込ませない。紅は、自らのことに踏み込ませない。高く積まれた塀がそこにあって、今以上踏み込むことを許させない。それに、強い紅を見ていると、先ほどまでのことが、何でもないように思ってしまうのだ。


 今の紅の心には、萩のことがある。影の国のことを、「庵原太作」と偽って繋がっていた官府。そして、影の国の術士であった柴。残された影の国の術士。紅が決めなくては、誰も決めることができない。

「萩。火の国の言葉は分かるな。私はお前に会いたかった。だから、どうか、もう暴れてくれるな。ここには、火の国の術士の精鋭が集まっている。萩の優れた力は、私も理解している。だが、ここには野江がいる。柴の加工した紅の石を持つ野江と正面から戦うことは、例え優れた力を持つ萩であっても無意味なことだ」


紅は立ち上がると、萩と視線の高さを合わせた。

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