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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤に生じた異変(3)

 白と黒は口を閉ざした。黒は言った。


――悔しいけど、白の言う通りなの。あたしたちには、状況を見ての想像しかわからない。きっと、全部を知っているのは赤だけなの。でも、何も言うなと言っているのよ。あたしも、赤に恩があるの。それは無色も同じ。だあら、赤が口を閉ざした限り、あたしたちは何も言えないの。


黒はおびえたように後ろへと下がった。俯き、黒い服の裾を握っている。白は言った。


――ですが、私は伝えることができます。ソルト、白の石を使いなさい。根本は解決しないでしょうが、一時的には症状の緩和をすることができるでしょう。


赤が口を閉ざしている。赤が異変の理由を知っているのに、紅の身に何が起こったのか、赤は知っているのに、赤は口を閉ざしたのだ。悠真は知っている。赤は紅を大切に思っている。黒の言葉を借りるならば、赤は紅を愛しているのだ。


 赤が紅を見捨てるはずがない。赤は紅と共にあるのだから。なのに、赤は口を閉ざした。赤は倒れた紅から離れて、姿を消した。真相を知りながら、姿を消した。

 悠真は赤と何度も言葉を交わした。赤は、見た目こそ恐ろしいが、とても温かい色なのだ。時に残酷な色に豹変するのに、時に恐ろしい色となるのに、赤の本質はとても温かい。悠真は火の国の民だ。悠真の一色が赤を示していなくても、悠真は赤が守る、この火の国で育った。火の国で生まれて、赤を高貴な色として育った。悠真の中には、赤が色濃く息づいている。


 白の色神が口を開いた。

「白の石を使うわ。私が白の石を使うわ」

白の色神は、白の化身だ。白の石を完全に引き出すことができるのは、白の色神だ。


――白

――白

――白


辺りを白い光が包んだ。それは、悠真が何度か見た白の石を使う場面だ。冬彦が秋幸の命をつないだ時も、白い光が輝いていた。冬彦は白に愛されている。白の石の力を完全に引き出すことができる貴重な存在。そんな冬彦と、白の色神の使う石の輝きは異なる。紅が紅の石を使うのと同じ。白の色神が白の石を使うのは特別な輝きを持つ。

 何とも清々しい白色だった。それは冷たい雪のように凛としており、辺りを浄化していくような色だった。

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