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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤に生じた異変(2)

 紅に皆が駆け寄った。遠慮がちに、白の色神たちも集まり始めた。そして、差し出されたのは、白の石だった。ここには白の色神がいる。白の色神の色白で、小さな手のひらの上に白の石が乗せられている。


「使ってください。冬彦が、白の石の力を完全に引き出せます」


そして白の色神は続けた。

「アグノ、赤の色神を見てちょうだい。白の石があれば大丈夫だけれども……」

白の色神は言い、首を横に振った。

「いえ、違うわ。怪我をしているんじゃない。一体、何が起こったの。黒の色神。あなたなら、分かるの?」

白の色神の声は甲高く、悲鳴に近い。今にも泣き出しそうな、震えた声だ。白の色神の甲高い声と対照的に、黒の色神クロウの落ち着いた声が響いた。

「こんなこと、考えられるか。一色が乱れている。まるで、暴れるように、消えるように。俺たち色神は、色から力を与えられている。色が人の世に力を及ぼすための器が、俺たち色神だ。俺たちが、自らの色に攻撃されることなんて、あってたまるか。――どうなっているんだ、黒」

クロウは口を開いた。赤の術士たちに色の姿は見えない。しかし、色神には見えるのだ。もちろん、悠真にも見える。


――クロウ、あんまり引っ張り出さないでちょうだい。あたしたちは人の世にあんまり関われないの。


黒の目には涙が浮かんでいた。黒い手袋をつけた手で、黒い服の裾を握っている。黒の姿を、白の色神も見ている。


「白、教えてちょうだい。あなたなら、何があったか分かるんでしょ」


次は白の色神が白を呼んだ。本来、色は色神よりも上に立つ存在。色神の命は色の思いのままだ。だが、クロウを救うために涙していた黒も、白の色神に付き従うように使い走りをした白も、色神を恐怖で支配しようとしているようには思えなかった。

 白は姿を見せた。先に見たとおり、全身を白い服を着た男の姿だった。


――私の愛しいソルト。赤が、何も言うなと。何も口にするなと。私は赤に恩があります。ソルトを救ってくれたのも、赤であり、赤の色神であり、赤の術士たちです。ですから、私は赤の願いを無下にすることはできないのです。


白は何とも言えない表情をしていた。

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