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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤に生じた異変(1)

 萩が捕えられると同時に、柴と野江が同時に紅へと駆け寄った。もちろん、悠真も同じだ。赤の術士にとって、紅は命を懸けて守るべき存在。紅のために戦っているのだ。紅が火の国を支えてくれるから、民は紅を敬う。誰よりも赤に愛された存在。それが紅だから。


 火の国を守っているのは赤い色。


 だから火の国では赤が高貴な色なのだ。紅が倒れることは許されない。

「紅!」

響く声は叫びに近い。赤丸だけが、そっと姿を消したのは、彼の存在場所が裏だからだろう。赤丸、気持ちの悪い嫌な咳をしながら、すっと姿を消した。

 秋幸は土に捕えられた萩の横で膝をつき、肩で息をしていた。秋幸からは、深みのある赤が零れ落ちている。


 一番先に紅に駆け寄ったのは、クロウだった。そして、野江、柴、悠真と続く。義藤は大地に膝をつき、その膝の上に紅がいる。義藤の腕の中にいる紅は、まぎれもなく華奢な女性であった。

「どうしたの、紅」

野江が膝を折り、そして紅の頬に触れていた。悠真も赤の術士たちの頭の隙間から紅の顔を覗いた。紅の顔色は悪い。唇は青白く、小刻みに震えている。


 柴も動揺していた。

「なんで、こんなことが起こるんだ。なぜ、色が乱れているんだ」

柴は一色を見ている。悠真よりも確かな目で、紅の鮮烈な赤色を見ている。


「調子が悪いことは分かっていた。俺には色は見えないが、紅の様子は見える。だから、今回はおとなしくしていろと。俺はそう言ったんだ」


義藤が紅を抱きしめた。紅と義藤の間を思えば、義藤が紅の異変を見抜くのは当然の流れだ。紅に生じた異変。悠真はそれにひどく動揺した。それだけ、悠真の中で紅は大きくなっていたのだ。それは、赤の術士たちも同じだ。紅との関わりが深い分、動揺は悠真よりも遥かに大きいのかもしれない。

 辺りを見れば、赤丸がそっと離れていった。義藤と同じ。義藤と同じで紅に近い存在であるのに、表の存在でないから姿を隠してしまう。何度も表の世界に出てきいる赤丸であるが、下村登一の乱の時まで、表の世界に一度も姿を見せていなかった。それは、赤丸の正体を知らなかった野江たちの反応で分かる。


 今更ながら、悠真が赤影が悲しい存在に思えた。とても心配しているのに、近くにいたいのに、裏の世界の存在だから、表に出てくることは許されない。正体が知られてしまっている今でも、赤丸は裏の存在であろうとしている。

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