赤と影の国の術士(8)
共に生きる。
そのためには、己も生きなくてはならない。
「友ならば、一緒に生きろ」
胸が赤く染められる。
野江と義藤の参戦により、萩がみるみる追いつめられていく。
「駄目だ……」
秋幸が小さい声で言った。
「これだけの力のぶつかり合いだ。柴たちが押し勝てば、萩の身は只じゃすまない」
そのことを、義藤らも分かっているのかもしれない。力の衝突は、圧倒的にこちらに分があるのに、戦いが終結しない。
「諦めろ、萩!」
柴が言った。
「負けるなら死を。それが、影の国の流儀だ」
萩が答えた。救いたいのに、救えない。心を捨てた者たちと同じだ。影の国の術士は、何かが異質だ。
紅が口を開いた。
「萩、杉ならここにいる。――すべて、分かっているんだ。杉が教えてくれたからな」
そして紅の横に並んで立つのは、一人の女性だ。悠真は彼女の姿を見たことがある。
「かつて、柴と逃げようとして失敗した萩は、再び脱走の計画を立てた。柴の脱走により、神経質になった影の国の管理者たちも、萩を逃がさまいと管理を強めた。それでも逃げ出す機会はあったが、萩は踏みとどまった、杉と出会ったからだ。杉を残していけない。そうしているうちに、萩は雪の国で脳をいじられて、支配を受け入れる人形となった。そのまま逃げ出せないまま、松らと出会い、今にいたる。萩は支配されているようで、支配されていない。杉を野江に託したのも、萩だ。萩、杉はここにいる。松らも無事だ。だから、萩。もう止めろ?ここは火の国。影の国じゃない。ここで死んだことにすればいい。生きろ、道具として死ぬな」
紅は言った。
「杉、萩を止めてくれ」
萩が自ら力を止めない限り、彼らに勝ち目はない。
「萩」
杉が萩を呼んだ。それでも萩は止まらない。
萩が力を止めない限り、萩が生きて戦いが終わることはない。