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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤と影の国の術士(5)

 力と力の衝突。

 ほとばしる赤の中で萩はさらに力を強めた。萩の力に押されて、柴の足はずるずると後ろへと下がっていった。柴の草履が地面をえぐる。


 義藤に守られていても、熱が悠真の頬を撫でた。


「柴に勝ち目はない」

義藤の声が響いた。見ていれば分かる。柴は赤の術士から大きな信頼を得ている。加工の技術、そしてその大きさ。その柴が追いつめられている。

 義藤の足が一歩前に出た。それでも踏みとどまっているのは、義藤だからだ。柴の誇りと信念のために、義藤は踏みとどまっているのだろう。


「残るは萩一人だ。複数でかかれば、勝ち目はあるのに」


義藤の絞り出すような言葉だった。


 秋幸も口を開く。

「柴は信念のために戦っているんだ。過去と向き合うために、過去と戦うために。俺たちは隠れ術士として利用されてきた。戸籍を持たず、山で育った。きっと、柴の過去は俺たちと違う。もしかすると、もっと過酷な環境で生きてきたのかもしれない。その柴が戦っているのは過去だ。自らの誇りのために、これからの未来のために、過去と戦っているんだ。だから邪魔をしちゃいけない。人には、誇りがある。守るべき信念がある。邪魔しちゃいけない。邪魔しちゃいけないんだ」


秋幸の声はとても静かに響く。


 紅の石と紅の石の力の衝突は強まる。それでも萩が柴を押しているのは事実だ。柴の力を飲み込むように、包み込むように、萩の力は強まっていく。


「一つの時代に、これほどの才を持つ者たちが多いのは、とても恵まれたことじゃな」


静観していた源三が言った。

「先の紅を支えたのは、先代の赤丸と柴だった。じゃが、今は違う。柴だけでない。野江、都南、佐久、義藤、秋幸、冬彦。今回の影の国の襲撃も、先代の時代であれば立ち向かうことができなかったはず。優れた術士の多い今だからこそ、できることがたくさんある。だから、柴が敗れることは許されない。柴を失うことは許されない。確かに、誇りや信念は大切じゃが、柴が死ぬことは許されない」


柴の死。


 悠真は、そんなこと考えられなかった。

 昨日、悠真は一日柴と一緒に行動した。柴のげらげらとした品のない笑い。柴の包み込むような大きさ。野江ら赤の術士たちが、柴を慕う理由が分かる。悠真も柴に守ってほしいのだ。柴は強くなくてはならない。柴は前に立ち続けなくてはならないのだ。

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