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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤と影の国の術士(2)

 柴と萩。

 似た名の響きだ。


 柴は影の国と通じている。どのように通じているのか、何があったのか、柴の過去と萩はつながっている。

「何も口にしやしない。奴ら、じっと睨み合っているだけさ」

冬彦が呆れていた。

「だが、二人は戦っている」

義藤が低い声で言った。まるで刃物のような義藤の横顔を、悠真は見つめて、そして再び柴と萩へと視線を戻した。


「久しぶりだな、萩」


柴が口を開いた。だが、萩は何も言わない。萩はゆっくりと刀を抜いた。


「何か言ったら、どうだ?」

柴は再び萩に声をかけた。萩の無感情な赤色に微かに光が灯った。


「命じられているのは、白の色神の殺害。さすれば、火の国での依頼は完了だ。白の色神の殺害を邪魔しなければ、赤の術士と戦うつもりも、赤の色神紅と戦うつもりもない。影の国は火の国と相性が悪い。二年前、影の国の術士は紅の殺害を依頼され、それを果たせなかった。当時、火の国に来ていた術士は皆、お前たちに殺された。生き残ったのは、指揮官一人。俺は、二年前に死んだ影の国の傭兵の代わりに火の国に入った。十年前に関しても同じだ。紅の殺害には成功したが、影の国も多大な犠牲を払った。それは、割に合わない仕事だ。――今回の依頼は、白の色神の殺害だ。火の国の赤の術士と戦うつもりはない」


柴はげらげらと笑った。

「二年前、俺たちは痛い目を見た。お前がいたら、紅を守ることができなかったかもしれないな。十年前、お前がいたら、先代と一緒に、俺も野江も都南も佐久も殺されていたかもしれないな」

笑っているようで、柴の声は笑っていない。昨日、夕日の差し込む部屋で、野江と言い争った時の柴と同じだ。


「何があった、萩」


柴は言った。とても強い声だ。


「何があった、萩。お前は、そんなことをするような奴じゃない!」


柴の大きな声が響いた。


「命令に逆らうことは許されない。依頼されたことは殺害。命じられたことは、必ず果たす」

萩がゆっくりと答えた。

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