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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤と影の国の術士(1)

 大きな爆発が起きた。傾いている官府は、さらに傾いた。


 悠真は官府を見上げた。


 義藤と秋幸は同時に走り出し、悠真は彼らの後を追った。赤丸が秋幸に投げかけた言葉。それは、紅が言っていたことと同じだ。秋幸の一色が分からない。そういうことだ。


――秋幸は赤の色を引き出すのが苦手。

――秋幸は紅の石を使うことが苦手。

――秋幸は赤との相性が悪いわけではない。


悠真には分からないことが多い。



「何も気にするな」

走りながら義藤が言った。赤い羽織が先頭ではためく。その声は、秋幸に向けられている。

「誰であろうと、何であろうと、秋幸は秋幸だ。俺は紅や赤丸のような、たいそうな力は持っていない。一色なんて見ることはできない。それでも、秋幸。俺には秋幸の姿が見える。秋幸の声が聞こえる。秋幸のことを知っている。だから、俺は秋幸を信じている」

義藤の声は優しく、温かい。それが義藤なのだ。


 柴が戦っている。戦っている相手は、影の国の術士。義藤の横を駆け抜けた術士だ。

 そこに白の色神もいる。


 瓦礫が散らばっていた。官府の中の一つの庭の端に白の色神たちがいた。その前に赤星と冬彦が立ち、飛んでくる瓦礫などから白の色神と源三ら術の使えない者を守ろうとするかのようにしていた。実際のところ、柴と影の国の術士の間に術の乱れあいも、起きていないのだが。

 柴と影の国の術士は、じっと睨み合っていた。

「柴が手を出すなってさ」

冬彦が呆れたように言っていた。


 義藤が来たのを確認してからか、赤星がゆっくりと身をひるがえした。誰もが柴と影の国の術士の戦いに見入っている。赤星はきっと、赤丸のところへと行くのだ。赤星は見た目こそ犬だが、中身は立派な赤影なのだ。

 義藤は紅の石を取り出した。そして、ゆっくりと口を開いた。

「昨日、野江が言っていた。影の国の術士で、もっとも強いのは萩だと。先の術士の名は萩でなかった。ならば、今、柴と戦っているのが萩だ」

柴と萩は戦っている。しかし、それは紅の石を使いあう戦いでも、刀で打ち合う戦いでもない。彼らはじっと、見詰め合っていた。


 大きさのある柴の赤。

 対照的に、萩の色はとても冷たく無感情だった。


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