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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤と心を捨てた者(18)

 義藤と赤丸の対立は深い。どちらが正解なんて分からない。どちらも正しいのかもしれないし、どちらも誤っているのかもしれない。確かなことがあるとすれば、今は兄弟喧嘩をしている状況じゃないということだ。


「義藤、考えろ。俺には分からない。先代の赤丸ならどうする?俺にはできない答えを探してくれ」


赤丸は小刀を松に突きつけながら言った。


「考えろ、義藤。殺さぬ戦いも確かに存在する。厄を持つ俺にはできない戦い方だ。義藤のことを弱いと言う者もいるだろう。だが、俺は違うと思う。お前は強いよ、義藤。お前は強い」


赤丸の手からは血が流れている。その血は松に突きつける小刀をつたい、松の頬の上に落ちる。赤い血だ。思えば、先の赤の暴走を収束させたときも赤丸の手からは血が流れていた。

 松は身をよじっている。体全部の体重をかけて、赤丸が押さえつけている。しかし、赤丸も義藤と同じ細身の体。押さえつけるには限界がある。


「考えろ、義藤」


優しい義藤。

強い忠藤(赤丸)。


けれども、それが正しい評価なのか分からない。義藤は強いから殺さぬのかもしれない。それを赤丸は知っている。

 直後、赤い光が強い熱とともに輝いた。防いだのは義藤の紅の石の力であり、義藤はその力を強めて再び敵を弾き飛ばした。「べるな」が動き始めた。二人のうちの一人、松を押さえているから、この程度で済むのだ。


 身をよじる松。赤丸が押さえこんでいる。赤丸が義藤に言った。


「義藤、この心を捨てた者が、影の国の術士であり、命じられて戦っていることぐらい、俺だって察している。いわば、この心を捨てた者は、俺たち赤影に近い。赤影だって、紅に命じられて戦うのだから。けれども、俺たちとは全く異なる存在だ。紅は、俺たちを道具のように扱わない。――先々代の紅は、暴挙の果てに赤影を大勢殺した。俺は、赤丸として、赤影をそのような存在にしたくない。影の国の術士は利用されるだけの存在。心を捨てて、利用されて、それで生きているとは言えないだろ。俺だって殺したくない。殺したくないさ。でも、紅を守るためなら、俺は何にだってなるさ」


赤丸は小刀を松の首に突きつけた。


「義藤、時間切れだ。二人には非はないないかもしれない。それでも、俺は二人を殺す」


戦いの果てにあるものは、決して良いことだけでない。悠真は赤丸と義藤を交互に見た。悠真は紅を思い出した。いかなる状況においても、紅がいればすべてを解決することができる。

 下村登一の乱のときも。

 黒の色神の襲撃のときも、

 紅がすべてを解決していく。


 悠真は紅を思った。彼女がいれば、状況は変わる。それが、赤の色神の力なのだ。

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