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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤と心を捨てた者(16)

 先代の紅は、今の紅に多くの力を残した。天才加工師柴。歴代最強の陽緋野江。稀代のからくり師鶴蔵。朱将都南。そして佐久。――朱護頭義藤と、赤影の筆頭赤丸は、先代の紅がいなければ存在しなかっただろう。

 義藤と赤丸は似ているようで似ていない。それは、赤丸が厄色を持っているためだからかもしれないし、彼らが両親のそれぞれから異なるところを受け継いだからかもしれない。先代を知らない悠真にはわからない。

 まぎれもないことは、義藤も赤丸も天才だということだ。


「義藤、お前は左だ!」


赤丸が一つ、叫んだ。


左へ走る義藤。そして赤丸は叫び続けた。その声は、心を捨てた者に向けられている。

「影の国の兵士。お前たちも使ったどうだ?紅の石を。ここは火の国。赤の国。赤の庇護の下、紅の石で挑んでこい!」


 心を捨てた者も、紅の石を取り出した。二つの赤い力が衝突し、渦を巻いている。義藤と赤丸が使うのは、悠真の知る紅が生み出し、加工師柴が加工した紅の石だ。彼らの一色を支えているのが、鮮烈な赤色だ。二人の心を捨てた者も紅の石を使っている。けれども、色が違う。きっと、先代以前の紅の石なのだろう。今の紅が監視することのできない紅の石だ。


 赤と赤がぶつかる。


 どちらの赤も、本物の赤だ。


 左へと飛んだ義藤と対照てきに、赤丸は右へと走った。義藤の紅の石の力が強まり、心を捨てた者の二人を抑え込んだ。爆発的に強まる義藤の力。その力と裏腹に赤丸は紅の石の力を弱めていった。


「すごい……」


秋幸が低い声で言った。

「義藤が一人で二人を相手にしている。天才だ……」

色を見る力を手にした秋幸。その目は、悠真の目よりも確かで、その目が見ている色は、悠真が見ている色と異なるはずだ。だが、今、この瞬間。悠真は秋幸と同じ気持ちあった。二人の天才がいるから、心を捨てた者と戦うことができるのだ。


 色を弱めた赤丸は、義藤の色の影に隠れた。心を捨てた者は、義藤の紅の石の力と押し合いをしている。身を潜めた赤丸は、色を消していた。


「何をするつもりなんだ」


秋幸が呟いた。戦いになれた秋幸でも分からないのだ。悠真に分かるはずもない。


 悠真は赤丸の姿を見た。赤い色の後ろで、じっと機会を伺っているような赤丸の姿があった。

 義藤と心を捨てた二人の者が押し合いをしている。心を捨てた二人の者は義藤の相手をするので精一杯のようであった。しかし、この状態は長くはもたない。一人で二人の相手をするには、義藤の分が悪い。

 乱れる赤が悠真の視界を遮る。それは、秋幸も、そして心を捨てた二人の者も同様であった。


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