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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤と心を捨てた者(14)

 ずぶ濡れの義藤は刀を構えた。義藤と赤丸は容姿が似ている。同じと言っても過言ではない。その二人が同じように構えたのだ。

「十年前と同じだ。足を引っ張るなよ、義藤」

赤丸が笑いながら言った。

「侮るな、忠藤。十年前と今は違う。秋幸、下がっていろ」

義藤が構えた。


 義藤と赤丸が同時に構える。それは何とも不思議な光景だった。同じ姿をした二人。十年間、顔すら合わせることがなかった二人だ。その二人が対峙し、同じ敵に挑もうとしている。

 人でなくなった二人は同時に駆け出した。そして、義藤と赤丸も同時に駆け出した。刀を抜き、そして駆け出した彼らと人でなくなった二人は刀で打ちあった。


 人でなくなった二人の動きは寸分の狂いもない。そして、再会した義藤と赤丸の動きにも狂いがない。彼らは一つの脳で支配されて動いているかのように、なんとも優美に、なんとも力強く刀を振るい、紅の石の力を発動させていた。


 悠真に戦う力はない。それでも、義藤と赤丸の戦い方がいかに優れているのか容易に想像が出来る。


「義藤が努力を惜しまぬ天才ならば、忠藤は努力を要さない天才だ」


秋幸の低い声が響いた。悠真よりも優れた力を持つ秋幸が、そのように赤丸を評価していた。


 赤丸と義藤のどちらが強いのか、そんなこと悠真には関係ない。二人とも、悠真よりも遥か高みにいるのだから。しかし、悠真と直結していることがあるとすれば、赤丸は厄色を持っているということだ。色に厄をもたらす。それが赤丸の持つ一色だ。


 赤丸は間違いなく天才だろう。一色が、才が、赤丸を指し示す。赤丸の持つ厄色が、何かに作用しないという保障はない。赤丸が強い色の力を放った。赤丸の力に導かれ、紅の石が悲鳴を上げるように力を放つ。その力は義藤を超えている。


――厄色


稀な色を持った赤丸の才だ。義藤も赤丸も天才だ。義藤は赤に愛され、優れた身体能力を持つ。しかし、赤丸の一色は特殊だ。生まれもっての赤丸に定められた宿命が、赤丸を支えている。

 悠真は身の毛がよだつ思いがした。背が粟立つ。厄色を知っているからなのか、知らないからなのか、悠真には分からない。確かなことがあるとすれば赤丸の厄色は、悠真にとって特別な色であるということだ。



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