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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤と心を捨てた者(13)

 彼は赤丸だ。義藤の兄とはいえ、赤丸だ。裏の世界で生きて、紅の刃として生きる。その存在は、暗殺にも使われる。自我を捨て、紅のために戦う。命を奪う。しかし、紅は赤影をそのように利用していなかったはずだ。少なくとも、悠真の知る紅は、赤影を裏の世界の道具として使うのでなく、彼らにも彼らの人生を手渡そうとしていた。――なのに、赤丸は命を奪った。赤を残酷な色へと変えた。


 赤が残酷な色へと豹変する。赤丸は戦う二つの力の間に割って入った。強大な紅の石の力と共に、割って入ったのだ。


 力の均衡が崩れた。赤丸の乱入により、人でなくなった二人の術士よりも、火の国に術士の方が強い力となったのだ。人でなくなった二人は動きを止めて、間合いをはかるように後ろへ下がった。


「赤丸」

「赤丸」


ようやく、赤丸の存在に気付いた義藤と秋幸が同時に赤丸の名を口にした。そして、倒れる年老いた男の存在にも気づいた。


「赤丸、お前……」


義藤が言った。語気が荒い。


「本当は、姿を見せるつもりはなかったが、見ていられなくてな。白の石に救われて、誰よりも早く駆けつければこの様だ」


赤丸が紅の石を取り出した。人でなくなった二人の術士はさらに後ろに下がった。


「なぜ、殺した。赤丸」


義藤は人でなくなった二人の術士を気に留めず、赤丸に対して詰め寄った。当然だ。悠真も同じことを思った。確かに彼らは敵だ。だが、紅が殺すことを許すとは思えない。

「お前は、本当に母に似ているな、義藤。すべてを守ることなんて出来ないのさ。――心配するな。まだ命を奪ってはいない。運が良ければ、生き残るさ」

赤丸は飄々と答えた。その言葉には力があり、強さが満ちている。


「赤丸……」


義藤が何かを言おうとしたとき、赤丸が遮るように言った。


「無駄口を叩く暇はないだろ。――あいつが指示を出せぬ今、もう薬を口にすることはないだろうが、奴らは強大な獣となった。悠長なことを言っていると、こちらが殺されるぞ」


赤丸は小刀を構え、反対の手で太刀を抜いた。その戦い方は、紅城の赤の術士の誰とも違う。それが、赤影の戦い方なのかもしれない。


「秋幸、お前は下がっていろ」


赤丸は言った。何よりも赤丸には勝利する自身があるようだ。



「でも……」


秋幸の言葉さえも赤丸は遮った。


「義藤、俺に言いたいこともあるだろうが、今は黙って力を貸せ。――まったく、俺は裏の存在だ。なのに、最近は表に引きずり出されすぎている。だから、今回は裏として戦うつもりだったが、仕方ない。あまりに情けないからな。聞いていたか?あの年寄が、あの二人に投げていた醜き言葉を。彼らは人であることを捨てたんじゃない。捨てさせられたんだ。命令されて、薬を口にして、戦わされている。それが、影の国の戦い方ならば、俺たちは永遠に影の国の術士に勝つことが出来ない。彼らは道具に成り果てているのだからな。良かったかもしれないぞ。先に黒幕を打っておいて」

赤丸は笑った。


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