表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
651/785

赤と心を捨てた者(12)


 悠真の目の前には、義藤がいた。義藤の紅の石の力が岩を叩きとおしたのだ。


「義藤」

悠真は思わず口にした。そして、違和感を覚えた。目を動かせば、もう一人、義藤がいる。秋幸と一緒に、人でなくなった二人の術士と戦っている。ぎりぎりの力の均衡。義藤と秋幸の二人だから、人でなくなった二人の術士と戦えるのだ。


「まったく、手のかかる」


その声は義藤の声。

姿かたちも義藤のもの。

なのに彼は義藤でない。

悠真は彼が誰なのか知っていた。


 義藤は赤い夜の戦いで悠真を守ってくれた。

 そして彼は、薬師の小屋で悠真を守ってくれた。


――赤丸


悠真は彼の名を思い出した。名を口にする前に、赤丸は駆け出した。


 義藤と秋幸。人であることを捨てた二人の術士。二つの力が戦っている。渦巻く色の力の横を赤丸は風のように駆け抜け、駆け抜けながら小刀を抜くと、迷いなく年老いた男の胸を切り裂いた。


 赤い色が花開く。

 赤が残酷な色に豹変する。

 赤はとても温かい色なのに。

 赤はとても美しい色なのに。

 赤はとても強い色なのに。

 赤が残酷な色に豹変する。

 赤い色が花開く。


 瞬く間の出来事であった。悠真が義藤と秋幸に目を向けると、彼らは人でなくなった術士と交戦しており、赤丸の乱入に気付いていない。


 赤丸は義藤の兄だ。

 強いが優しい義藤の兄。

 優しいが強い忠藤だ。


 義藤は一見すると怜悧で、鋭い刃物のような雰囲気をしているのに、とても優しい。影の国の術士である松にも情けを示すほど優しい。悠真はそんな義藤が好きだった。そんな義藤を信頼していた。そんな義藤に憧れていた。


 しかし……


 義藤が強さを認める赤丸は、迷いなく命を奪ったのだ。その胸に刃を突き立て、赤を残酷な色へと豹変させたのだ。信じられなかった。悠真は、目の前の光景を信じることが出来なかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ