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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤と心を捨てた者(9)


 ぞくり、と悠真の背中に何かが走った。彼らの色が膨れ上がり、機械的に変化し、まるで元の色を失いつつあった。

 彼らはもう、人でないようであった。


「似ている。二年前、都南や佐久を追いつめた者は、今の二人のように異常だった。それが、影の国の力なのか……」


義藤が低く言った。水で濡れた義藤の着物はとても重そうで、同時に濡れた髪からは水が滴り落ちていた。


 彼らはもう、人でない。


 悠真は二人の影の国の術士を見て、そう思った。彼らの色は、もう、作られた色でしかなかった。


 彼らはもう、人でない。


 人であることを捨てた、二人の影の国の術士は、再び義藤に襲いかかった。瞬発力は、当初の数倍。術の力も格段に膨れ上がっていた。義藤は紅の石の力でそれを防ごうとした。しかし、人であることを捨てた二人を相手にするには、分が悪い。

 その時、平凡な赤色が輝いた。平凡だが、奥深い色だ。その色が義藤の力を補佐するように渦巻、人であることを捨てた影の国の術士の力を受け止めた。


 秋幸だった。


 秋幸の力は確かで、悠真が思うに、赤い夜の戦いの時より格段に力を増している。それは、義藤と遜色ない。


「義藤、俺も参戦する」


秋幸がゆっくりとした動きで刀を抜いた。そして紅の石を取り出した。秋幸はとても強い。けれども、悠真には分からない。義藤と秋幸の二人であっても、人であることを捨てた影の国の術士と戦い勝てる保証はないのだ。


 人であることを捨てた二人は、何も話さない。目は虚ろで、まるで作り物の人形か、死人、廃人のようであった。廃人のようであっても、力は確かで、戦うための道具のようであった。

 人であることを捨てた二人は、肩を落とし、腕をだらりと下げて、猫背のままゆっくりと足を進めた。小走りに進むのは秋幸で、秋幸はずぶ濡れの義藤の横に立った。

「本当は、俺一人で終わらせたかったんだが……」

義藤は低く言った。そして秋幸が答える。

「義藤は十分強いよ。でも、相手が悪い。何か薬を使って、強引に力を引き出しているのなら、それは許される行為じゃない。身体への負担も大きいはずだ。同じようなことを、柴が戦う相手がしたのなら、柴が危ない」

義藤と秋幸は背中合わせに立った。二人の力は確かなので、悠真は必死に不安を打ち消そうとした。


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