表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
644/785

赤と心を捨てた者(5)

 閉じ込められたイザベラは脱出しようともがいていた。もがきながらも、何も出来ない。団子屋で、柴と赤星を蹴散らした不死の異形とは思えない。下村登一の乱の時の異形の者の方が恐ろしく感じる。それは、異形の者の迫力が違うから。


――黒の色神は弱っている


それは間違いない事実だ。

 思えば、イザベラは野江が襲撃された時も敗れていた。黒の色神は暴走した影響がいまだに残っている。今のイザベラは万全の状態でない。その力は、不死の異形でありつつも、あまりに脆弱だった。本来、黒の色神が力を分け与えるイザベラは、何よりも強い異形の者であるはず。それだけ、黒の色神は弱っている。ならば、同じように暴走した紅はどうなのか。あの強い紅は今、何を思っているのだろうか。


 悠真の横で秋幸が紅の石を取り出していた。影の国の術士は二人。

「黒の色神は弱っている。イザベラは大きな戦力にならない」

秋幸が構えた。彼は戦うつもりだ。

 当然だ。秋幸は強いのだから。


 離れたところで義藤と松が戦っている。その中で義藤の低い声が響いた。

「秋幸、大人しくしていろ」

強い声。温かい声。

「俺が二人相手にする」

義藤の刃物のような横顔が微笑んだ。そこにあるのは、溢れ出る自信。


「紅から言われている。秋幸を危険な目に合わせるなとな。そしてもう一つ。――本気で戦えと」


義藤の構えが変わった。きらりと、刀の白刃が煌めく。風が吹くと、赤い羽織がはためく。まるで、義藤という存在を赤が守っているようであった。


「ふざけるな」

松が絞り出すように言い、怒りを露わにするように駆け出した。

「遅い」

答えたのは義藤だった。松を援護するように、もう一人の影の国の術士「べるな」も駆けだした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ