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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤と心を捨てた者(1)


 官府は閑散としていた。イザベラが暴れたときと同じだ。あの時も人っ子一人いなかった。

「本当に来るのかな」

悠真は人の気配のない官府を見渡して、義藤の背を追いながら言った。

「来るさ」

言ったのは秋幸だった。

「もちろん、来るさ。柴が言ったんだ。間違いないさ」

柴は明らかに何かを隠している。

「柴を信じているのか?」

悠真が義藤に尋ねると、義藤は振り返ることなく答えた。

「もちろん。柴がこれまで俺にしてくれたこと、それは真実だからな」

赤い羽織が煌めく。赤の仲間の絆が見えた。


 悠真が憧れた赤の仲間。悠真が憧れた人の一人が義藤だ。


「悠真、秋幸。俺は紅城へ足を運び、赤の仲間えと出会った。大きな柴、優しい佐久、不器用な都南、そして美しい野江。彼らを導く遠爺と惣爺。術士を支える鶴蔵。――紅が色神となったとき、俺は一人で紅を守るつもりだった。忠藤が去り、信頼できる人を失った俺は、紅城という強大な邪から、一人で紅を守るつもりだった。だから俺は、戸籍を持ち術士となったのだから。俺は元来、色神が好きでなかったし、術士に対しても好感を抱いてなかったのだから。それでも、赤の仲間と出会って俺は変わった。彼らの一員になりたいと願ったのさ。彼らが紅を守ってくれると信じることが出来る。だから、俺が柴を疑うはずもない。それはきっと、野江も同じ。それでも柴に対を追いつめたのは、紅を守るため。俺たちは、ただ一人。彼女のために生きているのだから」


 悠真が憧れた赤の仲間。赤の仲間に憧れた人の一人が義藤だ。


出会った時は恐ろしささえ覚えた義藤が、今はとても頼もしい。


 悠真たちは、官府の庭にいた。その庭を選んだのは義藤だ。白の色神から離れることが正しいとは思えない。それでも、悠真よりも人生経験が多く、戦いを積んできている赤の仲間が選んだ場所だ。悠真は何も言わなかった。


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