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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤が戦う理由(10)


 秋幸の強い言葉はとても理路整然としていて、感情に左右されての発言とは思えなかった。


「人の価値観や、信頼を数値で測ることはできません。もし、それが出来れば、他人の世はなんとも退屈で、分かり切ったものでしょう。腹の底が見えないから、他人とのかかわりで不安になる。信頼や思いを伝えるべき手段は言葉でしかない。――紅、あなたは言葉ですべてを信じることが出来るのですか?紅が秘密を抱えている柴を疑わないのは、いや、疑っているのに柴に自由を与えているのは、柴を信頼しているから。なぜ、信頼しているのですか?柴の言葉だけで信じているのですか?逆に、野江や義藤はどうですか?紅は彼rも信頼している、紅を守る、と言った言葉で信じているのですか?」


なぜ、他人を信頼するのか。

何を根拠に信頼するのか。

実際に言葉ですると難しい。心を推し量ることなど出来ないのだから。


「心を図る一つの方法があります。それは、行動で示すことです。紅はこれまでの柴の行動を見ているから、紅は柴を信じている。――だから、俺にも行動で示してください。俺を信じているのなら、俺を行かせてください。俺を信じて、官府へと向かわせてください。官府で戦わせてください。他の赤の術士と同じように」


秋幸の深い色が力を持つ。平凡なのに、時折秋幸は信じられない深みを見せる。そのふり幅が大きいほど、秋幸に惹きこまれる。それは紅も同じ。


 紅は何も言わなかった。

 何かを考えるように、じっと俯いていた。


 声を開いたのは、しばらくしてから。


「好きにしろ」


そして紅は続けた。


「好きにして構わない。――だが……死ぬなよ」


そして紅は顔を上げた。紅の鮮烈な赤色が、さらに強まる。


「――悠真。秋幸。死ぬなよ。赤星。お前もだ。誰も死なせない。私の大切な仲間は、誰も死なせない」


紅の強い意志だ。どれだけ紅が仲間を思っているのか、紅が仲間を守るためにしていること、言葉の端々から伝わってくる。赤の術士が紅を思うのと同じように、紅も仲間を思っている。駆け出したいような紅の思いが伝わってきたような気がした。優しい紅が、仲間だけを危険な場に送り出す。断腸の思い。紅の平然を装った顔から、隠された思いが溢れ出ている。


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