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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤が戦う理由(6)


 悠真と秋幸は、促されて紅の間から外へと出た。会は終了だと言うことだろう。今日一日の悠真の仕事は、紅城で大人しくしていることだ。それが、分かっているからこそ、悠真は身体がむず痒い気持ちがした。今日、官府では戦いが生じる。これまでのような襲撃でなく、戦いが生じると分かっているのだ。それは、秋幸たちが襲撃にした赤い夜の戦いの時と同じだ。何かが起こる。赤の術士が危険に晒される。それが分かっていながらも、大人しくしていなければならない。それが、なんとも苦しいのだ。

 秋幸は何も言わずに足を進めていた。悠真は、秋幸の後を追った。今の悠真にとっては秋幸が道標だった。


――だが……


それで良いのかという思いがあった。


 悠真は大人しくしているべきなのだろうが。動くべきなのだろうか。自室に戻り、悠真は秋幸と一緒に座っていた。


 悠真には分からないことがもう一つあった。紅は悠真だけでなく秋幸にも残るように命じたのだ。秋幸は誰がみても明らかな実力者だ。その力は、春市と千夏を超える。今後、紅城を率いていくだけの才を持つ。現に、先の黒の色神の襲撃の時は、紅は秋幸を連れて官府へと赴いた。それだけ、紅は秋幸の才を信頼しているということだ。ならば、この場で秋幸に義藤の同行を命じない方が不自然だ。


――監視されている


昨夜、秋幸が漏らした一つの言葉。紅が秋幸を監視するはずがない。そんなことをすれば、まるで秋幸のことを疑っているようだから。だが、現に紅は秋幸に残ることを命じた。義藤と柴が戦いに赴くのに、白の色神が窮地に立たされているのに、敵は野江に打ち勝った影の国の術士なのに、紅は秋幸に残るように命じたのだ。


 それが、理解できなかった。


 悠真と秋幸はただ座っていた。そんな時、秋幸がゆっくりと口を開いた。


「ちょっと、厠へ行ってくる」


秋幸は立ち上がり、悠真は秋幸を見送った



 紅が大人しく紅城に残ると決めたこと、そして紅が秋幸を残したこと。一人で部屋に残ると無性に寂しい。だが、一人の静けさは悠真を冷静にさせる。


 このままでいいのか。

 ここにいるのか。


 悠真が自身に問いかける言葉。そして一つの答えを導く。悠真は本来の悠真を失っているのだ。無色の色神と出会って、悠真は自らが分からなくなっていたのだ。周囲の言うとおり、周囲の反応を見て、周囲に流されて。

 山を駆け回り、海に潜っていたころの悠真は消えてしまったのだ。


 悠真は思い出した。


 海。

 山。

 自由を。


 悠真は腰を上げた。



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