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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤が戦う理由(5)


 黒が部屋に満ちる。鮮烈な赤が消え、静寂な黒が覆っていく。悠真は身震いをした。この場で、紅よりもクロウの方が強いと示されているような気がしたのだ。


「それは出来ない」


紅が答えた。紅が言葉を発すると、再び部屋に鮮烈な赤色が放たれた。なのに、黒が色濃く残っている。


「クロウ、ここは火の国。赤の国だ。クロウの力を借り過ぎることは出来ない。だが、野江が傷つき、都南と佐久が消えた今、私には頼るべき仲間が少ない。義藤と柴と数少ない赤影だけで敵う相手ではない。だから、クロウの優しさに甘えさせてくれ。クロウを危険な場所へと連れ出すことは出来ない。だから、イザベラの力だけ貸してくれないか」


紅の声は凛と響く。鮮烈な赤を放ちながら、響いていく。クロウは紅に頭を下げた。

「元を辿れば、俺にも原因がある。紅が赤の力を暴走させた原因は俺にある。だから、イザベラは紅のために戦う」

悠真は紅とクロウを見比べた。紅が自ら官府へ足を向けることを諦めた理由は分からない。だが、義藤の何らかの言葉が、紅の足を踏みとどまらせたことは事実だ。悠真が義藤に目を向けると、義藤は赤い羽織を正し、姿勢よく座っていた。夜に、東のからくり始動場で、鶴蔵と鍛錬を積む義藤とは別人のようであった。義藤に声をかけるのは紅だった。

「義藤、何か意見はあるか?――私は、ここで大人しくしていよう」

義藤は答えた。

「春市と千夏に紅の護衛を。黒の色神も紅と一緒にいてください。悠真と秋幸も大人しくしていろ。――そして遠爺。あとのことは任せます」

義藤は遠次を向くと、深く頭を下げた。

 遠次は一つ、苦笑した。

「まるで、死にゆくような言葉を残すな。分かった。今日一日、紅の面倒はみよう。紅の行動一つ一つ、儂が管理しよう。だがな、儂はお前よりも先に老い死ぬ身。未来を託されても困る」

紅が不服そうに言った。

「遠爺、義藤もだ。私を子供扱いしないでほしいな。今日ぐらい、大人しくしているさ。後は任せたぞ」

紅は笑い、義藤は深く頭を下げた。



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