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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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赤が戦う理由(4)


黒の色神が襲撃してきたときも、紅は身の危険を顧みず前線で戦った。今回も、紅自身が柴と共に戦い、白の色神を救いに行く。悠真はそう思った。

 そもそも、影の国の術士は野江に打ち勝つ強さを持つ。野江は火の国で最も優れた術士。野江が敗れるということは、他の術士に勝ち目はない。赤の色神紅自身が戦わなくては、勝ち目がないということだ。


「紅は残れ」


その声は義藤のもの。義藤は膝をつけたまま移動すると、紅に近づいた。膝を擦って、這うように移動しているのにとても品が良い。そのような礼儀作法がるのではないかと思うほど、義藤の一挙手一動は流れる小川のようで、吹き抜ける風のようであった。

 紅に近づいた義藤は、躊躇いもなく、紅の耳元で何かを囁いた。直後、紅は目を見開いた。


「義藤、お前……」


紅が驚いたように口を開いた。

 義藤の言葉が続く。


「赤は何のために戦う?俺が戦う理由はただ一つだ。それは、赤影もも同じだろう。それが分からぬ紅じゃなない」


義藤の言葉はとても端的で、それでも温かさに包まれている。

そして、紅は目を伏せて呟くように言った。

「――私は残る。官府へ向かうのは、義藤と赤影だ。後は残れ」

紅の言葉は強い。

「義藤、影の国の術士は強い。赤影も動ける者はあまりいない。実質、お前と柴に頼ることしかできない――義藤、死ぬなよ。」

義藤は強い紅の言葉を聞いて、目を細めて微笑んだ。

「もちろん、死んだりしないさ」

彼らは当然のように、命の話をする。命の話、死ぬ話。赤の術士の義藤は常に死の近くにいる。それが紅を守るということだ。


「紅、イザベラを行かせよう」


言ったのは黒の色神クロウだった。黒の色神クロウが持つ異形の者「イザベラ」の強さは本物だ。

「俺の体調は大方回復した。イザベラも本来の力を発揮できるだろう。イザベラは不死の異形。一騎当千の力を持つ。命ある術士の負担を少しでも軽くできるのなら、イザベラの力を使ってくれ。もしくは、俺が一緒に官府へと行く」

クロウの持つ色が強まった。悠真はその黒へと引き込まれそうになった。クロウが言葉を発すると、クロウが持つ色が強まり、部屋に満ちていた赤色がかき消された。

 赤が部屋からかき消される。悠真はとても嫌な気持ちがした。まるで、黒が赤を奪い取ったような、そんな気持ち。火の国が宵の国に喰われるような、そんな気持ち。赤が弱い色であると教えられ、赤の無力さを突き付けられたような、そんな気持ち。そして、赤が消えてしまうのではないかと不安になる、そんな気持ち。


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