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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色が切り開く未来(12)


柴が紅を思う気持ち。それはきっと野江と同じだ。

「危なっかしいんだ。久しぶりに紅城に帰ってきて、俺は思ったのさ。紅が危なっかしい。そりゃそうだよ。未だ、二十歳なんだ。あの強さがあるから、俺たちでも騙される」


野江も柴と同じことを思っていた。

柴の言葉は続く。


「所詮、俺たちは先代の術士だ。俺たちが先代から受けた恩恵は大きい。俺たちは先代に守られて、先代に救われたんだ。今まで、意識することはなかったが、紅の中にも先代の影がある。もしかしたら、必死に先代を超えようとしていたのかもしれない。先代が後の紅のために源三に伝言を残していたことが、紅には堪えたんだろうな。必死に先代を超えようとしていた紅にとって、未だに先代の足元にも及ばないのだと教えられる事実となった」


「でも、あたくしたちは先代と紅を比べたりしていなくてよ」


野江は先代紅と今の紅を思い浮かべた。昨夜、紅に言ったように、先代と紅は別人だ。二人は比べることが出来る存在ではない。


「――そうだな。それでも、言葉で伝えるには難しい。紅が戦う力を持っているから、俺たちは過信してしまっていたんだ。野江、野江は紅の無防備な姿を見たことがあるか?」


柴の唐突な問いに野江は首をかしげた。そして、考えた。昨夜のことを思い出したが、それを否定した。紅は寝間着で出歩いていたが、あの場で戦いが起こればすぐに戦えただろう。眠ることもしなかった。


「野江、俺は見たことがないんだ。紅がこの紅城へ来たのは、僅か十歳の子供だった。俺は、紅が眠るところを見たことがない。油断しているところもだ。いつでも、紅は戦えただろう。俺は、そんな紅の姿を見て、それが紅の強さなのだと思っていた。紅は演じることに長けている。もしかしたら、俺たちの前でも演じているのかもしれないな。――そう思うと、不安を覚えるんだ。本当の紅はどこにいるんだと。俺は、真に紅を支えることが出来るのかと」


柴の話を聞いて、野江は何も言えなかった。野江も紅の心の一端を垣間見ることも出来ない。それが、紅の強さだと思っていたのだ。


「野江、俺は紅を守ってやりたい。でも、俺にはその力がない」


野江は柴を見た。柴の大きさは何も変わらない。


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