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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色が切り開く未来(11)


「野江、大丈夫か?」

柴が野江の横に座っていた。野江は柴を見上げた。

「ええ、問題なくてよ」

野江は答えた。昨日、野江は柴に対して許されないことをした。柴には野江を非難する権利がある。残酷な方法で柴を追いつめ、野江は柴の居場所を奪ったのだ。


「柴」


野江は柴の名を呼んだ。幼い頃、彼がいるだけで野江は強くなれた。

「どうした、野江?」

柴の声は大きく温かい。


「あたくしは、柴に対して悪いことをしたわ。ごめんなさい」

素直に言葉が出てきた。

「何も気にするな」

そして柴は布団の中にある野江の手を掴み、取り出した。その手に紅の石が渡される。

「野江、お前の新しい石だ。この紅の石で戦え」

紅の石の赤い輝き。この輝きが野江に力を与えてくれる。


「柴、あなたがいなくては加工が出来ないわね」


野江は柴の存在の大きさを知っている。加工の技術は野江たち術士にとって必要なのだ。加工によって力を引出し、強度を高める。


「加工は、ある程度の感性があればだれでもできることさ。――本来はな、加工は監視するための技術だったのさ。定められた術士以外に使用できないように制限するためにの技術。何せ、紅の石は大きな力を持っているからな。その加工を正確に行うことで、紅の石からさらに大きな力を引き出すようにしたのは俺さ。俺がいなくても大丈夫さ――野江が紅を支えてくれるだろ」

柴がげらげらと笑い続けた。


「野江は頑張ったさ。ちゃんと、己の手で未来を手にいれたな。戦って、手に入れたな」

柴が笑う。二十年前と同じだ。

「萩と戦うの?」


野江は尋ねた。ここで柴を怒らせてもいい。影の国術士「萩」と柴はつながっている。影の国と柴がつながっているのだから。萩を侮ることは出来ない。その強さは本物だ。油断いていたとはいえ、不意打ちとはいえ、野江は敗れたのだから。


「萩……そこまでたどり着いていたんだな。なのに、隠していてくれた。野江はやっぱり優しいな」

「あたくしは、優しくなんてなくてよ」


野江は答えた。野江が柴を追いつめたのは事実なのだから。

「萩は強い。だから、俺が戦わなくちゃいけない。免罪符を、あいつに結ばせないようにするためにな」

柴と萩はつながっている。それを野江は責めることが出来ない。柴の大きさがあるからだ。


「野江、紅のこと、頼めるか?」


ふと、柴がそんなことを口にした。

「なぜ、いまそのようなことを言うのかしら?」

野江が問い返すと、柴は大きく微笑んだ。


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