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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色が切り開く未来(10)


 風が頬を撫でた。


 野江はゆっくりと目を開いた。息苦しさは続いている。なのに、幾分か気分が良かった。それは、あの日の夢を見たからかもしれない。野江の人生が大きく変わった日の夢だ。あの日、柴がこなければ、今頃野江はどこかの家の嫁となっていただろう。いや、嫁でなく妾となっていたかもしれない。


 自由の無い日々だ。


 野江が自由になったのは、あの日をきっかけにしてのことだ。


 目を開くと、そこには柴がいた。そして、一歩引いてアグノと葉乃がいた。野江が目を開いたことに気付いたのか、アグノが近づいてきた。そして野江の首に触れると、温かく微笑んだ。

「まさか、こんなによく薬が効くなんて……」

アグノは昨日足を痛めていた。その足は大丈夫なのだろうか、と野江はそんなことを思っていた。

「もう、大丈夫でしょう。葉乃殿、同じ薬を七日分出してください、熱が下がっても、必ず飲み忘れないように」


野江はぼんやりとした視界でアグノを見ていた。その先に柴を見た。あの時から、二十年が経った。柴の大きさは変わらない。変わったのは、昨日のあの一時だけだ。


「良かった。――アグノ、葉乃。悪いが野江と二人で話があるんだ。少し、外してくれるか?」


二人は何も言わずに部屋を後にした。アグノは足を引きずって歩き、薬師葉乃は這うようにして。



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