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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色が切り開く未来(8)


大兄たちは苦笑した。術士を小馬鹿にした笑いだ。野江はその笑いが嫌いだった。

(おかしなことをおっしゃる。野江はまだ九つですぞ。選別もまだにございます)


術士はげらげらと品なく笑った。名門鳳上院家の当主たちに向かって笑うなど、恐れ知らずだ。それを許しているのが、紅の権威を背負った赤い羽織なのだ。


(この子が術士だとして、選別の時に術士の才覚を見出されたとして、あんたたちは隠すだろ。名家の娘ならば、術士にするより違う使い道がある)


術士は続けた。


(この子の才は本物だ。きっと、俺を超える才。一色が示している。なんとも、強く美しい一色だ。だから連れて行く。赤の術士として、紅城へ招く。異論は許されない。紅が決めた。だから、陽緋兼朱将の俺が、直々に迎えに来たんだ)


術士の手は野江に差し出されている。


(術士の道は辛い。戦いの道。報われることも少ない。けれども、術士は自由だ。己の生きる道を己で切り開くことができる。生まれがどうとか、容姿がどうとか、男だとか女だとか、そんなことは関係ない。術士の道は強さだけ。強さと紅への忠誠心。それがあれば、いくらでも未来を切り開くことが出来る。――一般的に、術士の生きる道は喜ばれるものじゃない。辛い道だからな。だが、鳳上院家の末娘という役割よりは、楽しいかもしれないぞ)


野江は術士を見上げた。


(あなたは、とても楽しいのですか?)


術士は笑った。


(そりゃあ。術士でなければ、俺は自由を手にすることが出来なかったし、最高の仲間も手に入れることが出来なかった)


術士はとても大きい。誰よりも温かく、強いように思えた。少なくとも、大兄たちよりは、優しい。目が温かいのだ。


(あたくしは、術士として勤まるのですか?)


すると、術士はげらげらと笑った。


(どうだろうな。才覚は一流だ。才だけならば、俺をも超える。一色は本物だ。だが、結果は自身で決めるものだ。一流の才を有していても、努力を怠れば大したことは出来ない。未来は、己の手の中にあるのだから。誰も決めてくれない。自分が行ったことが未来へつながるのだからな)


――自分で行ったことが未来へつながる。


それは何とも自由なことに思えた。生まれたときから未来の決まっている今とは違う。野江は自由だ。それが嬉しい。



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