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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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緋色が切り開く未来(6)


「野江」

その声に野江は目を覚まそうともがいた。その声は、紅の声。野江が守ると誓った人の声。野江は目を覚まそうともがいたのに、目を覚ますことが出来ない。

 手を握る力。熱を持つその手は、紅の手。

「昨日までは、元気だったのに」

不安に揺れる、赤い声。赤い声。赤い、赤い、赤い声。

「アグノが言うには、そのようなものなのだとさ」

柴の声だ。

「柴がいなければ、野江の異変に気付かなかったな」

紅の声が翳る。

「野江は隠すのがうまいからな。お前が責任を感じることはないさ、紅」

「いや、私の目はどうかしてしまったのかもしれない」

「野江が隠すのがうまいだけさ。実際、俺以外の誰も気づいていない。俺が紅の石を届けに、野江を訪ねたから気づいただけさ」

「それでも、私は気づかなくちゃいけない。私は、赤の色神なのだから」

「背負うな。紅。俺たちは赤の術士。お前と共に歩むことが生きる道。その道も、己で選んだ道だ。野江も、そして俺も」

少し間が置いて続く。

「それでも、野江が選んだのは先代かもしれない。柴、お前が選んだのも私でなく、先代かもしれないだろ。昨日、私は柴を最低な方法で追いつめた。本当は、私のことを嫌っているかもしれない。私が赤の色神だから、だからここにいる。それだけかもしれない」


野江は暗闇の中に堕ちかけた。それでも、紅を思うと必死にしがみつく自分がいるのだ。どれほどの苦痛があろうと、紅を守る。それが野江の信念なのだ。


「――確かに。先代は優れた男だったよ。俺を救ってくれたのも、野江を救ったのも先代さ。だが、お前と先代は違うだろ。俺は先代にも救われたが、お前にも救われているんだ」


柴の声は温かい


 野江はその声を聞きながら、堪えられず、再び暗闇の中へと堕ちていった。




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