表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
613/785

緋色が切り開く未来(5)

 野江の身体を手が触れる。

「詳しく検査できないので分かりませんが、触診では、幸いなことに、肋骨骨折や内臓損傷はないようです。怪我は、落馬の衝撃での右肩関節脱臼と鎖骨骨折、そしておそらく上腕骨にも骨折があるでしょう。腕神経叢損傷も疑われます。そして、頭部挫傷。これだけの骨損傷があれば、脂肪塞栓症疑いもありますが、少し症状が違います。その可能性は低いでしょう。高熱、頻脈、頻呼吸、敗血症の可能性が高いです。――また、あなたを怒らせるかもしれませんが、火の国では治療機器がない。検査機器もない。詳細なことは分かりません。ですが、敗血症からの多臓器不全という最悪の事態を防がなくてはなりません」


野江は闇の中でアグノの声を聞いていた。ああ、なるほど。己は死ぬのだと意識した。


「どんな薬が必要なの?」


女の声。ああ、薬師の声だ。


「感染している原因菌を叩く、抗生剤です。あとは、脱水を防ぐための輸液を……」


「分かったわ。感染に効く薬があるから、それを調合するわ。水が足りないなら、飲み薬を。飲みやすくて、吐きにくいのがあるから」


野江は闇の中にいた。このまま死ぬのだと、そんなことを思いながら。


「千夏」

柴の声だ。

「千夏、葉乃とアグノを連れて、野江を救う手立てを。葉乃、紅城にある薬で対応できるか見てくれ。頼んだぞ」

柴の大きな声。その声を聞いていると、安心する。

「アグノ、野江を死なせることは出来ない。だから、白の色神を救ったとき、白の石を一つ提供してほしい。そのためなら俺は、白の色神を救うために戦おう。ちょうど、影の国とのけりもつけなくちゃいけないところだ」


「ソルトは命を軽んじる人ではありません。陽緋には、自分も救われました。助けます」


アグノの声。

野江は闇の中へと堕ちた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ