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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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官府と白い昼(13)

 アグノは死んでなどいない。そう信じていた。どれほど言い聞かせても、どれほど信じようとしても、心に不安は忍び込む。不安の中にソルトはいた。無事だと分かり、泣きたいほど嬉しかった。


「アグノ……無事だったのね」


とても嬉しかった。そして、異邦人であるアグノを殺さないでくれた紅に感謝した。紅の優しさが分かる。

「先代の紅様は、暗殺されました。そして、二年前、今の紅様を狙った襲撃がありました。色神は、国を支える方でございます。その命を、私利私欲のために、殺して良いはずがありません」

源三の言葉の一つ一つがソルトの中にしみ込んだ。源三がゆっくりとソルトに歩み寄り、ソルトの前にしゃがみ、視線の高さを合わせた。


 吉枝と同じだ。


 皺のある顔の奥にある、深い色をした瞳。苦労の後も見える。だからこそ、源三の目は、一色は温かかった。

「信頼できる者に紅様への伝言を依頼しております。庵原太作を探した者が来たとしか伝えておりませんが、紅様は行動を起こすでしょう。だから、ご安心ください。あれから一刻が経ちます。早ければ、すぐにでも返答がくるはずで……」

そこまで言うと、彼は口を開いた。そして、ソルトの肩越しに後ろを見て微笑んだ。


「ほら、御覧ください」


言われたソルトが振り返ると、そこには馬に乗った大きな男がいた。赤い羽織を纏った男だ。


 ソルトが森の中で救った男。


 柴だった。


「今、官府に人は殆どおりません。ここが戦場になっても、何の問題もないでしょう」


源三が優しく微笑み、ソルトの肩に手をかけた。

 重い物が下りたような気がした。


「ありがとう、紅」


ソルトは心から紅に礼を言った。



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