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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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官府と白い昼(7)


 冬彦は荷車の持ち手を降ろすと、門の前に立つ二人の術士に近づいた。


「ねえ、官府は今、営業しているのかよ?」


営業という言葉が正しいかは分からないが、今、官府が平常通りの実務を行っているかは分からない。中が無人であれば、庵原太作につながる道は残されていない。


「営業?」


術士の一人が怪訝な顔で冬彦を見ていた。

「営業っていっているだろ」

いつもは頼もしく見える冬彦も、こうやって大人の術士と対峙していると、彼が子供なのだと教えられる。医学院で育ち、年齢以上の聡明さを持つソルトが見ると、今の冬彦は子供でしかない。

「営業って、お前、何しに官府へ来たんだ?何か用事でもあるのか?」

術士が威圧的に冬彦に言った。


 術士の才では冬彦の方が遥かに上であり、もしここで彼らが冬彦と戦えば、一分と持たずに彼らは破れるだろう。冬彦は優れた術士なのだから。


「官府に用事があるんだ」


冬彦は言った。そんな問いでは駄目だ、とソルトは思ったが、布を被ったソルトに冬彦を止める術はない。ソルトの容姿は、火の国では異質なのだから。


「小僧が官府に用事だと?お前な……」


術士は苛立ちを通り越し、呆れていた。


「なんだよ、何か文句あるかよ」


ソルトは溜息をついた。時には、図りしれない聡明さを見せるのに、今の冬彦は子供でしかない。大人と対峙するときのポイントを押さえてない。


「ここは、子供が遊びにくる場所じゃないぞ」


術士は手をひらひらと振って、冬彦を追い払おうとした。


「なんだよ、話ぐらい良いだろ」


冬彦が食いついたが、無駄足でしかない。ソルトが呆れたとき、吉枝がゆっくりと口を開いた。

「術士様、そんな無下に扱わないでくださいな」

年の功とは言ったものだ。吉枝が出ると、二人の術士が一歩構える。

「私らは、官府へ人を尋ねに来たのでございます」

吉枝がしずしずと前へ出て、一度深く頭を下げた。


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