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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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官府と白い昼(6)


 宵の国は自国内部の戦乱に追われて、十分な政治的統率力を発揮できずにいた。それが、宵の国が大国でありながら、強大な力を持つ黒を有しながら、今の地位で踏みとどまる原因だ。戦乱に覆われていた宵の国は、自国内部で殺し合いをしていた。それは、術士の死にもつながる。強大な力を持つ黒の石があっても、その力を引き出す術士がいなければ、他国との戦争は出来ない。もし、宵の国が他国に目をむけたら世界は変わる。黒の力を持ち、国としても広大な国土を持つ宵の国が、政治的に安定すれば世界は変わる。


 火の国は国土が狭い。他国が欲する力を持つ赤の力を持ち、火の国独自の加工という技術を持つ。さらには、優れた術士を多く有している。優れた術士と強い色があれば、一騎当千も夢ではない。その火の国が、小さな島国にとどまっているのは、国を鎖国し異国との交流を閉ざしていること。異国が見えないから、民が異国への願望を持つこともない。国として異国との交流を封じているから、異国は火の国に近づきがたくなる。国土の小さな火の国が戦いに向かないのは事実。小さな島国は人口も左程多くないだろう。火の国が国を開放し、他国の土地を求めれば、世界は変わる。


 雪の国は白を持つ。白は誰もが欲する力を持つ。だが、その色ば直接的な戦いに直結しない。白の石を利用した財力こそが、雪の国の力だ。白の石が直接的な戦いの力を有さないから、雪の国は異国との戦いを求めない。だが、雪の国の財力は、医学力は、異国との戦いを求めたときには強大な力を発揮する。人の命を救う術を知っているということは、人の命を奪う力を知っているということなのだ。


 ソルトは白の色神として、脆弱な赤の術士を見た。火の国がどれほど優れた術士を有していても、末端の才は大きなものではない。だからこそ、ソルトの命を狙った影の国を、ソルトは火の国で自由にさせることは出来ないのだ。火の国の赤の色神紅も、必死にこの国を統治しているに違いないのだから。


 ここにいるのは、白の色神。

 命を扱うことが出来る白の色神。

 ここにいるのは、脆弱なる娘。

 自らの身も守れぬ娘。


 ソルトは、強さと弱さの挟間にいた。こんなにも無力な色神がいて良いのだろうか。そう思った。それでも、ソルトは強くならなくてはならない。ソルトが背負うのは、雪の国の民の命だ。


――白が選んだ。


 白が選び、ソルトに白の色神としての力を与えた。つまり、今の雪の国にソルト以上に、白に適した一色を持つ者がいないということだ。



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