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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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紅城の赤い時間(21)

 ふと、義藤が動きを止めた。義藤は立ち止まり、鶴蔵のぎこちない動きを見ているようであった。


「そろそろ、休みませんか?」


義藤の声が広場に響いた。大きな声でないのに、悠真の耳に届いたのは、広場が静まり返っているからだ。丁寧な言葉は義藤らしい。


「はい。そうしやす」


鶴蔵は藁の人型にもたれかかるように座り込んだ。離れたところからでも、鶴蔵が疲れ果てていることを知ってとれる。広場の端に籠がおかれてある。義藤が籠に歩み寄り、手拭いを取り出した。そして、再び鶴蔵に歩み寄ると手にした手拭いの一つを鶴蔵に差し出した。


「大丈夫ですか?」

義藤の言葉は優しい。

「大丈夫でございやす」

鶴蔵は義藤から手拭いを受け取り、手拭いで顔を覆った。天を見上げるように顔を上げる鶴蔵を気遣ってか、義藤は鶴蔵から離れて水桶へと足を進めた。義藤が何をするのか考えるまでもない。水を入れた柄杓を義藤は鶴蔵へと差し出した。


「鶴蔵、どうぞ」


言われた鶴蔵は顔に掛けた手拭いを外して義藤に顔を向けて、小動物のように何度も頭を下げた。

「申し訳けございやせん。迷惑をかけやす」

義藤は膝をついて、鶴蔵へ柄杓を差し出した。

「遠慮なく。どうぞ」

義藤の表情まで見て取れる。


 それは、刃物のように鋭く、それでいてとても優しい表情だ。

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