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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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紅城の赤い時間(19)


 悠真と秋幸は東のからくり始動場を探した。


 東ということは分かる。悠真は空を見上げた。海で生きる者は皆、星の位置で方角を知る。この時期の星の位置、月の位置、時間、それらで海で生きる者は方角を知る。海で方角を見失うことは死につながる。だからこそ、悠真は割り出すことが出来る。


「東のからくり始動場の場所を知っているのか?」


秋幸が悠真の後ろを歩きながら尋ねた。


「いいや、知らないよ」


悠真は空を見上げた。

「だったらどうやって……」

紅城は優れた人が多い場所だ。優れた術士も多い。けれども、悠真には悠真の特技がある。長い間、田舎の漁村で育った漁師の子供の特技だ。

「知らないけれど、方角は分かるだろ。東の始動場ということは、方角は東だ。空の星の位置関係で方角は容易く分かる。東はあっちだ」

悠真は東を指差した。


 からくり始動場とは何をするところなのか、悠真は知らない。その場所は「鶴蔵」が携わる場所なのだろうと、漠然と思っていた。東へと進む道は、一直線ではない。いくつもの建物がある紅城だからこそ、複雑な外廊下を東を目指し足を進めた。もう、どうすれば自室に戻れるのか分からなくなっていた。


 東へと進む道で、悠真は見覚えのある場所を通った。そこは、厩の近くだった。中枢の建物から少し離れたところ、厩の近くにからくり始動場があるようであった。


 途中、何人かの人とすれ違った。当直をしている術士や、紅城で働く者たちだ。彼らは仕事をしている。官邸でなく、役場の方を浴衣姿で歩き回る悠真と秋幸はとても場違いな存在だ。少し恥ずかしい気持ちにもなったが、ここで引き下がることは出来ない。柴が見ろと言ったのだから、きっと見ておいた方がいい。悠真は自分でも驚くほど柴のことを信頼しているようであった。


 秋幸は何も口を開かなかった。


 だから悠真も何も言わずに足を進めた。


 浴衣姿の悠真たちを見て不信の目向ける者たちも、悠真たちを非難したりしない。一時的とはいえ官邸を与えられている悠真たちは彼らにとって「腫れ物」と同じなのだ。さわらない方がいい。藪蛇にならないように、そっとしておく方が良い。そのような存在なのだ。


 東のからくり始動場は、厩の近くにあった。厩では、舞風は絹姫たちが休んでいるのだろう。そう思うと、覗いてみたいという好奇心もあったが、馬は神経質な動物だ。神経を逆撫でし、眠りを妨げたくない。厩番にも迷惑がかかる。


「こんなところに、東のからくり始動場があるんだな」

秋幸が厩の方向を見ながら感心していた。


 東へと足を進める悠真は、からくり始動場に近づいたことをすぐに理解した。そこは、柴の加工場と同様に人気のない場所で、厩より端に建物があるとは誰も思わないだろう。そんな場所だった。


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