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一色  作者: 相原ミヤ
火の国の夏に降る雪
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紅城の赤い時間(18)

 柴の言葉。

 柴の才能。

 柴の存在価値が明らかにされる。


「この人、すごい人だ」


秋幸が柴の体にかかった薄い肌掛け布団を整えながら言った。


「この人、本当にすごい」


悠真は、ただ頷いた。柴の言葉の一つ一つが、柴の存在が、紅城を動かしている。大きな存在感があるのに圧迫感がない。影から紅城を支えているのが、柴なのだ。


「すごい人だ。この存在が紅を支える。――いつか、俺も……」


悠真は秋幸を見ていた。そして、秋幸も悠真と同じなのだと思った。突然、一色が見えるようになって困惑するのは悠真も秋幸も同じ。紅城に招かれて萎縮するのも、同じ。赤影に憧れる秋幸は、一体何を思うのだろうか。


「秋幸、行こうか。東のからくり始動場へ。たぶん、義藤が何かをしているんだよ」

悠真は立ち上がり、秋幸に手を差し出した。先ほどと逆の立場になっている。


「あ、ああ」

秋幸は戸惑ったように悠真を見つめた。立ち上がった悠真は秋幸に手を差し出した。差し出した悠真の手を秋幸は取り、立ち上がった。先ほどの外廊下とは逆の立場となった。悠真は秋幸に親しみを覚える。秋幸が平凡な雰囲気を持っているから、秋幸が同世代だから、そして秋幸は底が見えないから。


 底が見えないと言うのは、秋幸が不思議だからだ。突如、一色が見えるようになるなど、悠真は信じられなかった。悠真自身も曖昧とはいえ、突如一色が見えるようになり、他人に合わせて加工した紅の石を使用することが出来て、色の力を収束させることが出来る。理由は、悠真には無色がついているからだ。悠真の無色の一色がそのようにさせたのだ。ならば、秋幸はどうなのか。何者なのか。悠真は分からなかった。無色に尋ねようとしたが、無色からの返答はなかった。


――秋幸。


 悠真は平凡に隠された奥深い秋幸の一色を見て、背筋が粟立つ気持ちがした。なぜだか分からない。それでも、秋幸を信じていた。理由があるとすれば、秋幸と話して、秋幸と行動を共にしてきたからだろう。秋幸の言動を見て、秋幸から悠真に投げかけられる言葉を聞いて、悠真は秋幸を信じていたのだ。


 柴は大きな寝息を立てて眠っていた。柴の額にはいまだに汗が浮かんでいる。柴を残していくのは気が引けたが、柴も「いつものこと」と言っていたので気にしないようにしていたのだ。


「行こう、秋幸」


悠真は柴を一度見つめて、建物を後にした。


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